2011年3月24日木曜日

知財・刑事を考える:「ニセモノ」と故意

商標法違反事件で,今,動いています。


それで,差し支えない範囲で,考えているところを書きたいとおもいます。

知財・刑事分野は,興味深い分野で,

知財に詳しい弁護士は,刑事をやらない人が多い
知財に詳しい弁理士は,刑事を知らない人が多い
(受験生のブログですが刑事法の原則を完全に置き忘れているのをみました)

刑事に詳しい弁護士は,知財をやらない人が多い

警察も,本当に分かっているのか怪しい人も多い

というナイナイづくしの分野です。

まず,条文(商標法で)

(侵害の罪)
第七十八条  商標権又は専用使用権を侵害した者(第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第七十八条の二  第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

(侵害とみなす行為)
第三十七条  次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一  指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二  指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
三  指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
四  指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
五  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
六  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
七  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
八  登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為


よくある
偽ブランドを外国から買ってきて,売るための在庫を持っているのは, 
(類似する)「指定商品」であって(類似する)登録商標を付した商品を,「譲渡のために」(譲渡目的)「所持する行為」(商標法37条2号)が問題となります。

これは,条文(商標法78条の2)で,
「行為を行つた者は、」とあるので,故意犯となり,過失犯は除外されています。
これは,故意処罰の原則という刑法の大原則で(刑法38条1項本文),「法律の特別の規定」(刑法38条1項ただし書き)たる,たとえば「過失により」という条文がないので,故意犯のみが処罰されるということになります。

第38条 罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。



構成要件としては,
①指定商品またはそれに類似する商品であること
②登録商標またはそれに類似する商標を付した商品であること,
③譲渡目的があること
④所持すること
で,この①,②,④全てについて,故意がなければなりません(③は主観的要件)。


売っている途中で捕まったばあいの,その在庫については,③④はあります。

客観的な要件としての①②は商標権者の登録原簿,商品の確保によることになります。
これも,検察立証は,まだ容易といえます。
(そもそも,まったく類似しないものは,刑事事件にはならないといえます)。


問題は,故意です。


商標権は,特許庁に登録されて,民事上では,過失も推定規定もあるので,この主観的要件は割と簡単なのですが(民事では,原則故意も過失も損害賠償額がかわらない),

刑事では,商標が登録されていること,指定商品の範囲にあることを特許庁で調べなければいけない義務もなく,ほとんどが知らないということになります。

そこで,「ニセモノ」概念が出てきます。


あるブランドの「ニセモノ」ということが分かっていた
→あるブランドが,商標権を登録し,本来商標が付された商品についての権利が,ニセモノ業者とは別の者(ブランドフォルダー)がいて,そうと分かって,売るために持っていた

と解釈され,①の故意があるということになります。


特に,この場合,商品をみていれば,この商品についても,別に誰かが権利を持っているだろうということになり,②の故意もあるということになります。



実は,考えるとかなり難しい論点があります。

次回は,

「ニセモノ」と構成要件をまたがる故意についてかんがえます。

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