2011年3月26日土曜日

知財・刑事:譲渡目的所持罪と譲渡罪,譲渡罪は困難なのだ

まずは,商標法の条文を,

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(侵害の罪)
第七十八条  商標権又は専用使用権を侵害した者(第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者を除く。)は、十年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

第七十八条の二  第三十七条又は第六十七条の規定により商標権又は専用使用権を侵害する行為とみなされる行為を行つた者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

(定義等)
第二条  この法律で「商標」とは、文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。
一  業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの
二  業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)
2  前項第二号の役務には、小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供が含まれるものとする。
3  この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
一  商品又は商品の包装に標章を付する行為
二  商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為

(商標権の設定の登録)
第十八条  商標権は、設定の登録により発生する。

(商標権の効力)
第二十五条  商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。ただし、その商標権について専用使用権を設定したときは、専用使用権者がその登録商標の使用をする権利を専有する範囲については、この限りでない。

(侵害とみなす行為)
第三十七条  次に掲げる行為は、当該商標権又は専用使用権を侵害するものとみなす。
一  指定商品若しくは指定役務についての登録商標に類似する商標の使用又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品若しくは役務についての登録商標若しくはこれに類似する商標の使用
二  指定商品又は指定商品若しくは指定役務に類似する商品であつて、その商品又はその商品の包装に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを譲渡、引渡し又は輸出のために所持する行為
三  指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供するために所持し、又は輸入する行為
四  指定役務又は指定役務若しくは指定商品に類似する役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用に供する物に登録商標又はこれに類似する商標を付したものを、これを用いて当該役務を提供させるために譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持し、若しくは輸入する行為
五  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をするために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を所持する行為
六  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を譲渡し、引き渡し、又は譲渡若しくは引渡しのために所持する行為
七  指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について登録商標又はこれに類似する商標の使用をし、又は使用をさせるために登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造し、又は輸入する行為
八  登録商標又はこれに類似する商標を表示する物を製造するためにのみ用いる物を業として製造し、譲渡し、引き渡し、又は輸入する行為

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よくある
偽ブランドを外国から買ってきて,売るための在庫を持っているのは, 
(類似する)「指定商品」であって(類似する)登録商標を付した商品を,「譲渡のために」(譲渡目的)「所持する行為」(商標法37条2号)が問題となります。

これは,商標法違反(譲渡目的所持罪)(商標法78条の2,37条2号)です。
典型的なのが,売ったところを現行犯として逮捕され(売った相手の商品を確保できず),残った在庫について処理される場合です。

売った相手と相手の商品が確保できたばあいは,罪が重い,
「商標権又は専用使用権を侵害した者」に該当する侵害罪(商標法78条)になります。


具体的に条文を追うのが大事です。

「譲渡」は,商標の「使用」に該当しますので(「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡」(商標法2条3項2号)),「商標権者は、指定商品又は指定役務について登録商標の使用をする権利を専有する。」(商標法25条本文)権利を侵害していることになります。

もちろん,指定商品について問題となること(商標法25条本文),商標権は,登録してはじめて権利になるので(商標法18条1項),結局,商標法違反(譲渡罪)(商標法78条,2条3項2号)の構成要件は,

①商標が登録されていること
②指定商品であること
③上記①の標章が該当の商品(譲渡品)に付してあること,
④譲渡

ということになります。

相手方に売ることで,商標法違反(譲渡罪)が既遂に達します。
また,商標法違反(譲渡目的所持罪)は,残っている在庫について,「所持」したことで成立します。


残っている在庫は,売ってはいないので,当たり前ですが,商標法違反(譲渡罪)は,成立しないということになります。

さて,
売った相手方とその商品が確保されていない場合は,実際上,
①の商標が確認できず,また,②の指定商品性,③の商品に商標が付してあることも,証拠がないことになります。

つまり,売ったこと(④譲渡)が明らかでも,残った在庫について,商標法違反(譲渡目的所持罪)で処理するしかありません。

ニセモノを売ったという故意があっても,商品確保ができていない以上同じく,
商標法違反(譲渡罪)は,問えないということになります。


仮に,ニセモノを売ってくれという者がおり,売った人が捕まり,売った商品を確保できていない場合でも,同じことになります。

ニセモノを売ってくれ,おお!という
「商標法違反(譲渡罪)」の共謀が成立していても,

実際には,商標法違反(譲渡目的所持罪)しか立証ができない以上,ニセモノを売ったという者に,商標法違反(譲渡罪)の罪は問えないことになります。

売った商品が確保されているかで,かなり,罪が違うことになります(商標法78条は,10年以下懲役,78条の2は,5年以下懲役です,罰金も違う)。


実際の捜査の現場では,現行犯として売っているところだけではなく,相手方を確保して,その商品を確保しなければならないのですから,売った瞬間で逮捕を敢行しなければならず,なかなか難しいということになります。

また,捜査官が秘して商品を買うということも,おとり捜査になりえますので,ここでも捜査が困難とはいえましょう。

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