2009年5月12日火曜日

孫子と交渉事・紛争解決(4)

 孫子曰わく、昔の善く戦う者は先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ。  勝つべからざるは己れに在るも、勝つべきは敵に在り。故に善く戦う者は、能く勝つべからざるを為すも、敵をして必ず勝つべからしむること能わず。故に曰わく、「勝は知るべし、而して為すべからざる」と。  勝つべからざる者は守なり。勝つべき者は攻なり。守らば則ち余り有りて、攻むれば則ち足らず。善く守る者は九地の下に蔵れ、善く攻むる者は九天の上に動く。故に能く自ら保ちて勝を全うするなり。(形篇 一)
 
勝つためには防御が重要ということである。


これは,実際の法的紛争にも当てはまります。

理論的にいえば,要件事実論があります。

法律効果の発生は,法律の要件に当てはまる事実を全て充たす必要があります。
逆に,法律効果を妨げたり,消滅させたりすることも,法律の要件に当てはまる事実を全て充たす必要があります。

これを要件事実論といい,司法試験合格後の司法修習においては,この習得が最も重要となります。


 
具体的には,

攻める方は,法律効果発生原因事実を全て証拠に基づき主張・立証する必要があります。
 
逆に,守る方は,発生原因事実の一つでも真偽不明にするか,積極的に障害・消滅事実を立証すれば足ります。

攻める方は大変なのです。


もう少し具体的に言いましょう。

人にお金を貸し付けた!

これが,請求原因事実となります。


これで,直ぐに訴えましょう!
とはなりません。


弁済されていないか?
相殺される反対債務を持っていないか?
等の抗弁事実を十分に検討する必要があります。



特許等の知的財産訴訟でも,攻める方でも,十分に相手方の防禦方法,言い分を十分に把握しておく必要があります。


特に特許権では,元々無効である!
という強力な抗弁があります。

損害賠償を取ろうと訴えたら,無効になってしまった!

ということも,あり得ます。



弁護士も,攻めるタイプと守るタイプがあります。

私は,どちらかというと守るタイプと思います。


この守るのが重要というのは,

クラウゼヴィッツも同じことを述べています。
「防御という戦争方式それ自体としては,攻撃よりも強力である」(「戦争論」レクラム版(芙蓉書房出版,2001)p230)
「防御はより強力な戦争遂行の方式である」(「戦争論」レクラム版(芙蓉書房出版,2001)p231)

古典は,応用がききますねえ。


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