2009年5月21日木曜日

名誉毀損の要件(3)-憲法における真実・真実相当性の位置付け-

 最高裁は,名誉毀損の違法・責任阻却事由について,
   真実性・真実相当性の法理
を採用している。
 (2)・番外編で述べたように,
   真実性は,事実審の口頭弁論終結時における証明可能な程度の真実性
   真実相当性は,行為時における証明可能な程度の真実性
を意味し,いずれも,相当程度の資料・根拠による必要がある。

 そして,真実であること,もしくは,真実であると信じたことが相当であることについては,名誉毀損をした者,名誉毀損加害者が,主張・立証する必要がある。仮に,真偽不明に陥り,真実か否か分からないという場合,真実とは認められないとして,名誉毀損が成立するということになる。

 また,真実性は勿論,真実相当性についても,高度の蓋然性ある確信の段階まで(民事の場合。刑事は,一般には合理的な疑いを超えるまでが必要とされている),立証される必要があり,真実相当性を立証程度を緩和するものとして捉えるのは最高裁の立場ではない。

 さて,名誉毀損表現は,名誉毀損を伴うものといっても,表現の自由(憲法21条)の範疇に入るものである。逆に,名誉は,保護されるべき人の社会的評価であり,人格権として位置付けられ,人格権は,憲法上,憲法13条によって保障されているものと考えられている。

 つまり,名誉毀損表現を保護するかしないかは,いずれにしても,表現の自由を制限するか,人格権を制限するか,の相克的な価値判断なのである。
 
 憲法問題となるかは,実務的には,上告理由に該たるかで問題が顕在化する。憲法問題とならなければ上告理由にならず,重要な法令解釈等についての誤りを,最高裁自らが必要(重要)と判断した場合に任意に取り上げる上告受理申立事由にしか,ならないからである。

 最高裁は,憲法上の人権の相克を,どのように調整するか否かという判断基準は,真実性・真実性相当法理であると捉えている。

 名誉毀損の憲法問題は,真実性・真実相当性法理の適用そのものである。仮に真実性・真実性相当性法理の適用を誤れば,それは,不当な名誉たる人権侵害となる。
 この場合,上告受理申立と上告理由とは,内容的には一致することになる。

 最高裁は,真実性・真実相当性法理を,今もなお,精緻化しているが,これを完全に放棄することは今後もないと考えられる。真実性・真実相当性法理が,憲法上の名誉毀損と表現の自由との妥協点であるとして,憲法を具体化させる基準として確固たるものとなっているといえる。珍しい一例と考えられる。