2010年6月18日金曜日

政治資金規正法における虚偽,故意(1)(2)(3)・・・公認会計士の主張に対して

政治資金規正法における虚偽,故意(1)・・・公認会計士の主張に対して
[ 刑事を考える ]

Last updated 2010.02.16 17:04:18
http://plaza.rakuten.co.jp/utuboiwa/diary/201002160000/


政治資金規正法,収支報告書虚偽記入罪に関するブログがあったので,興味深く読んだ。

「公認会計士の目から見た陸山会政治資金事件」

(http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010/02/post_499.html)




若干疑問な点があるので,

書いておく。言うまでもなく法律的な観点からのものである。



1 解釈権者の誤り

 当ブログは,以下のように書く。

「治資金収支報告書の虚偽記載というのであるから、本来であれば、この資金移動の事実をどのように政治資金収支報告書に記載しなければならないかという会計上の正解がなくてはならないが、実はこれがない。信じがたいかもしれないが、検察官も正解を持っていない。」

「部分単式簿記においては、その記載範囲は自立的に決定できない。完全複式簿記であればここでの資金移動に対する会計処理は単一となるが、部分単式簿記では 複数の会計処理が可能なのである。現行の政治資金規正法は部分単式簿記による複数会計処理の並存を認め、報告書における作成者の裁量余地を大きく残している。基準上裁量権の認められた会計処理に対して虚偽記載を主張するのは、一方の見解を強要することにより裁量権を否定するに等しく、これを無理して立件するのを国策捜査という。」



前段と後段とは矛盾しているように思う。

検察官は,自己の有する解釈についての「正解」(と思うもの)を持っている。

少なくとも,

「基準上裁量権の認められた会計処理に対して虚偽記載を主張するのは、一方の見解を強要することにより裁量権を否定するのは、一方の見解を強要することにより裁量権を否定するに等しく、これを無理して立件するのを国策捜査という。 」

という見解には賛同しかねる。



元々検察官は,法的専門家としての解釈権を持っているが,これについての最終的な判断者は,裁判所,更に最終的は,最高裁判所である。



ある一定の解釈が正しいとして,それに従えば犯罪になるという主張自体を裁判所に求めることは何らおかしいことではない。



解釈が分かれるようならば,裁判所に対して公権的判断を求めることも検察官としての義務である。





2 第12条の記載事項

 当ブログは,以下のように書く。 

「その第12条において求められる政治資金収支報告書の記載事項は、政治団体の「収支とその他の事項」とされている。ここで「その他の事項」としては、不動産、取得価額100万円超の動産、預貯金、金銭信託、有価証券、出資金、貸付金、支払金額100万円超の敷金、取得価額100万円超の施設利用 権、並びに、100万円超の借入金が限定列挙されている。すなわち、政治資金収支報告書で作成が義務付けられているのは、複式簿記を前提とした損益計算書や貸借対照表ではなく、単式簿記を前提とした収支と「特定の資産並びに借入金の明細書」だけなのである。」





「政治資金収支報告書で作成が義務付けられているのは、複式簿記を前提とした損益計算書や貸借対照表ではなく、単式簿記を前提とした収支と「特定の資産並びに借入金の明細書」だけなのである。」



この部分だけでは,政治資金規制法12条を全て説明し切れていないと思う。

12条1項は,

 すべての収入の記載を要求し,

12条2項は,

 すべての支出の記載を要している。

ことの関係は,何ら語っていない。



「このような部分的な単式簿記では、例えば、預り金や仮受金などの「100万円超の借入金」以外の負債は記載する必要がない。また、資産についても、 立替金や仮払金は記載しなくて良いと言うのであるから、これらの収支もまた記載義務がない。この事件では小沢氏の出した4億円の不記載が問題とされているが、仮にそれが借入ではないということであれば、現行の政治資金規正法上それを記載しないのはむしろ当たり前で、そもそもこれを政治資金規正法違反に問う事はできないという事になってしまう。」



負債や資産については上記記載義務がないことは条文から分かる。

12条3項は,資産等として,

「資産及び借入金」のみを挙げているからである。



「このような部分的な単式簿記では、例えば、預り金や仮受金などの「100万円超の借入金」以外の負債は記載する必要がない。また、資産についても、 立替金や仮払金は記載しなくて良いと言うのであるから、これらの収支もまた記載義務がない。」



慎重な言い回しをしているので,厳密にみる必要があるが,

預り金,借受金たる負債,

立替金や仮払金たる資産については,記載しなくてよい

というのは分かる。



しかし,ここから,

「収支」についても「記載義務がない」というのは,どういうことであろうか。

資産でないからという複式簿記的な発想からだと思うが,解釈の基本は,理論からではない。条文の文言からである。





政治資金規正法が,

12条3項で記載義務がない資産や負債については,

12条1項,2項での「すべての収入」「すべての支出」には含まれない

と記載があるならば,分かるが,そうはなっていない。



余りにも条文から離れる解釈は,

不自然といわざるを得ない。

私からみれば,検察のいう解釈の方が自然である。





元々,単式簿記は,収入支出に着目するものであるから,預り金も収入とするほうが自然のような気もするが,どうであろうか。



なぜ政治資金規正法が,あるかと考えれば,

これが立法趣旨の話しであり,解釈にも極めて影響するところである。

政治団体の入りと出を明らかにすることである。

元々,資産・負債が限定列挙なのは,営利団体でもない政治団体について,細かな資産・負債をみても仕方がないという発想と考えられる。



政治資金規正法では,収入と支出がはっきりしていれば,自ずと,資産や負債も,大したものとならないに違いない。使い道は,どうせ政治活動であるし,政治活動をすることで,資産が大幅に増えるという発想はなかったということであろう。



国民の関心としても,どういうところから貰い,どういうものに使ったかが分かれば,用として足りると考えたのであろう。


立法趣旨からも,預り金だろうがなんだろうが,「すべて」収入,支出は書くべきとする方が妥当と考える。


多くなったので,続きは,次のブログで書くことにする。

Last updated 2010.02.16 17:04:18


政治資金規正法における虚偽,故意(2)・・・公認会計士の主張に対して
[ 刑事を考える ]

Last updated 2010.02.23 17:01:52
http://plaza.rakuten.co.jp/utuboiwa/diary/201002160001/



続き。



3  4億円の仮受金

当ブログは,次のとおり書く。

「小沢氏は4億円を陸山会に貸付けたと言うのであるから、そのときの4億円は小沢氏の金だったはずで、だから定期預金を担保にしてその4億円を銀行から借りたのも小沢氏である。そうすると、小沢氏が担保にした定期預金は一体誰ものかということになるが、ここで小沢氏は政治団体名義の定期預金をさも自分のもののようにして銀行担保に差し出し、借りた金はしっかりと自分の金にして政治団体に貸付けている。このことから、小沢氏がこの定期預金が実質的には自分のものだと思っていたことが分かる。そして石川議員もまた、この小沢氏の言動に何の疑問も抱いていないのであるから、政治団体側も、定期預金は実質的には小沢氏のものだと認識していたことになる。ならば、陸山会は、あの10月初旬に小沢氏から用立ててもらった4億円の仮受金を、この定期預金で決済(返済)したことになるではないか。」



定期担保の被担保債権は,陸山会名義の定期預金であるが,これは,他の政治団体からかき集めてきたものであるとされる。現金の移動としては,政治団体→政治団体で,どうやって個人のものにはなったのかの説明がないとわからないが,個人のものと言っている。



この部分では,

小沢代表者を擁護する気はないようであるが,それはひとまず置く。

「ここで石川議員に会計上の正解をお教えしておくと、小沢氏からの仮受金4億円が陸山会の定期預金により決済されているのであれば、定期預金の名義にかかわらず、この定期預金は実質的に小沢氏のものなのであり、実質的他人所有の資産は政治資金収支報告書に記載する必要はない。4億円の仮受金が簿外となった以上、この定期預金も簿外にしておけばよかったのである。そうしておけば、定期預金が満期になる都度、銀行が自動的に借入金と相殺してくれるので、石川議員もややこしい事務所費との遣り繰りなどしなくて済んだ。何よりも、こんなどうでもいいことを問い詰められ、その答えに窮するあまりまさか逮捕されることもなかった。」


事実と評価とは,分けて考えよう。

定期預金(陸山会名義)(他の政治団体からかき集めてきた)4億円は,

小沢さんのものであった。

確かにそうであれば,記載は必要なくなる。

この事実認定は筆者の憶測である。そういう事実関係で,石川氏もそう思っていたのならば,問題ない(H22.2.23加筆)。

もっと問題は筆者のいうとおりであれば,石川氏は,一部を小沢氏個人資産のものといいながら,一部を政治団体のものと思っていたことにはならないのか(H22.2.23加筆)。

筆者の前記事実認定に戻ろう(H22.2.23加筆)。



そう

陸山会に入った現金4億円(立替金?)も,

他の政治団体からかき集めてきて陸山会名義となっている定期預金4億円も,

上記を担保にして借り入れた4億円も,

小沢氏個人の収支であるということになる。


前に戻るが,当ブログは,次のようにも書いている。





「これが複式簿記を知らない(中途半端に)まじめな人の悲しいところで、石川議員は例の小沢氏からの仮受金をせっかく定期預金で返済して簿外化したにもかかわらず、年が代わって平成16年の政治資金収支報告書を作成する段になり、定期預金が陸山会のままで名義変更されていないことにハタと気がつき、これはマズイとばかりに、政治資金収支報告書に定期預金を計上してしまったのである。

小沢氏の個人資産を政治団体の資産として計上するというのであるから、当然のことながら政治団体の資産は4億円分だけ過大計上されて貸借が合わない。そこで、たまたま問題の世田谷の宅地の登記が12月末に間に合わなかったことを思い出し、ならばこちらも4億円近いので、定期預金をこの年度に計上する代わりに不動産を翌年回しにしておけばちょうど辻褄が合うと考えたのではないか?見よ。石川議員の経理処理は翌平成17年以降に見事に辻褄が合い、平成17年に4億円の事務所費が計上されるや、平成17年と平成18年にかけて4億円の定期預金は消滅している。」

変な話しである。

石川氏は,複式簿記の知識が足らず,簿外化してもよい資産,収入というものがあることも知らなかったということになるが,なぜか,借受金を定期預金で簿外化することを思いついているということになる(H22.2.23加筆)。



また,そもそも,筆者の事実認定によれば,石川氏は,政治家小沢氏の秘書でありながら,個人資産の収支を扱っていたことになる(H22.2.23加筆)。



「たまたま問題の世田谷の宅地の登記が12月末に間に合わなかったことを思い出し,ならばこちらも4億円近いので、定期預金をこの年度に計上する代わりに不動産を翌年回しにしておけばちょうど辻褄が合うと考えたのではないか?」


法律家とは異なると思われる面白い事実認定である。

たまたま登記が間に合わなくなったという。

通常,決済と共に,即座に登記手続に走り,文字通り,司法書士が,登記所に走る。固定資産税は,年を渡ると,名義の方に来るから(契約でどうなっているかは知らないが),決済がされたのならば,早くに名義を移したいということになる。

登記実務上,よくあるとのことであるが,私はまだまだ経験不足ということであろうか。
この後の記載,(H22.2.23削除)

「たまたま問題の世田谷の宅地の登記が12月末に間に合わなかったことを思い出し,ならばこちらも4億円近いので、定期預金をこの年度に計上する代わりに不動産を翌年回しにしておけばちょうど辻褄が合うと考えたのではないか?」

これについての会計上からの説明はない。
単式簿記からの正当性についての記載がなければ,分からない。



上記の説明では,4億の立替金も,

政治団体からかき集めてきた陸山会名義の定期預金4億も,

定期預金を担保に借り入れた4億円も,

全て政治団体代表者たる小沢氏の実質的所有とされている。


この説明では,この不動産も,陸山会所有ではなく,

小沢氏個人のものということになるようである(H22.2.23加筆)。


そうであったら,購入した不動産も,

小沢氏の実質的所有となる

ということになって,政治資金規正法上の資産として計上することは,

逆に許されないということになるということであろうか(H22.2.23加筆)。


幸い,政治団体は,権利能力なき社団であり,
名義が個人名義となるので,都合もよい。

ただ疑問,確か,小沢氏は,この不動産について,明確に,政治団体所有のものとしていたはずである。

事実と違うことを書いていれば,虚偽であるし,故意もあることになる。

これは,単式簿記からはどのように説明すればよいか私には分からない。


加筆したら,字数制限を超えたので,(3)として続きを書くことにする。

Last updated 2010.02.23 17:01:52


政治資金規正法における虚偽,故意(3)・・・公認会計士の主張に対して
[ 刑事を考える ]



Last updated 2010.02.23 17:44:26
http://plaza.rakuten.co.jp/utuboiwa/diary/201002230001/


(3)が消えてしまったので,新たに書くことにする。



4  客観面と故意,違法性の意識,法律(の解釈)の誤り

当ブログは,次のように書く。
「さて、石川議員の政治資金収支報告書作成をめぐる舞台裏が理解できたが、このことから我々は、二つの決定的な事実を知ることができる。石川議員は会計の基礎理解が決定的に欠けており、従って、石川議員に政治資金収 支報告書虚偽記載の犯意を認定する事はできない。刑法上、罪を犯す意思がない行為はこれを罰することができない。(刑法第38条第1項)」


「二つの決定的事実」というのが,曖昧である。次に書く, 後に出てくる客観面の虚偽ではないという主張を含んだものとして書いておく。

「この事件の資金移動を会計的に分析する限り、石川議員以下の3名の被告人は証拠構造上圧倒的に有利であり、それどころか、政治資金規正法が部分単式簿記を前提としている以上、ここには犯罪事実そのものが存在しない。 」


実は,この部分は,法律的に決定的な誤りを犯している。
まず,

犯罪事実そのものが存在しない,
という会計上の問題にする解釈は,必ずしもあたらないことは,前記した。

むしろ,この解釈は,条文の文言(すべての収入,すべての支出)に反するもので,筆者の見解を裁判所が採用するか,検察官の求める解釈を裁判所が採用するかは,今後判明するが,検察官の解釈は,条文からは素直な解釈と言わざるを得ない。


被告人において「証拠構造上圧倒的に有利」ということも,よく分からない。

条文に反していないというのは解釈からも強い。

どちらかというと不利なのは,条文には,「すべての収入」「すべての支出」とあるが,会計上からは,記載しなくてもよい収入,支出があるとする解釈の方である。


法律上の決定的な誤りということを書いておく。




収支報告書虚偽記入罪の「虚偽」とは,政治資金規正法上求められる記載すべき事実と,実際に記載された事実との不一致である。

筆者の見解のとおり,
客観的に虚偽ではないとするのであれば,故意を検討する必要はない。

主観的要件に関する規定である刑法38条1項は関係がないのである。

これを関係があるかのように書くのは明らかに誤りである。



また,筆者によれば,

「会計の基礎理解が決定的に欠けて」いるから,犯意(刑法38条1項)がないという。

筆者の見解ではなく,検察官が求める解釈を裁判所が採用した場合,「会計の基礎理解が決定的に欠けている」ことは,故意には影響しない。

故意とは虚偽であることを知り,または,知らないが構わないという主観的要件だからである。



仮に関係があるとすれば,故意の問題ではない,別の論点である

違法性の意識(の可能性),または法律(の解釈)の不知,

の問題となる。



筆者がいう「犯意」は,故意のことをいっているのか,違法性の意識のことを言っているのか,法律の解釈の誤りを言っているのか明らかではない。



しかし,単に政治資金規正法は,部分的単式簿記を採用しているから,すべての収入・支出の内,記載しなくてもよいという解釈を信じただけというのであれば,殆ど犯罪の成立に影響しないというのが正しい。



つまり,筆者の解釈を採用すれば,客観面の「虚偽」が問題となるだけで,刑法38条1項には関係がない。

仮に検察官の解釈が正しいと考えたとき(虚偽は認められるということになる),

「石川議員は会計の基礎理解が決定的に欠けており、従って、
石川議 員に政治資金収支報告書虚偽記載の犯意を認定する事はできない。刑法上、罪を犯す意思がない行為はこれを罰することができない。(刑法第 38条第1項)」
というように刑法38条1項を根拠に,犯罪成立を否定するのは極めて困難ということになる。
はずである。


私もなるたけ自制しているつもりだが,他の専門分野に口を出してしまった結果,法律用語の極めて基本的な間違いを犯しており,全体としての主張の信用性に欠くことに結果的になっており,残念である。



5 立法論


結論的に,小沢氏は白!という結論になり,立法論として複式簿記を採用するように提案している。

あれだけ,貶めておきながら,白!というのは面白いが,立法論としても問題がある。

問題は,政治資金規正法上の収支報告書が,

確定申告のように,代表者の署名押印を要しない

ということにある。

税務上の確定申告であれば,巨額の脱税を,俺は知らない! と言い逃れすることは困難である。

代表者の署名押印を要すること,

で,会計責任者との共犯の立証の困難性は,格段に減るはずである。

複式簿記にする意味であるが, 本来,政治団体は,通常資産も負債もため込まない構造となるはずである。

政治活動に関する入りと出が分かればよいと思うのだが,そうであれば,検察官の解釈を採用し,すべての収入・支出を徹底させる解釈を採用すれば,よい。

ただ,筆者のいうように,会計の解釈の誤りで犯罪は影響しないとはいえ,解釈の余地がないようにする改正・政策はしてもよい。
筆者がいうように,定期預金の名義も,不動産の所有関係も,信用ならないといえば,その意味はあるのかもしれない。

Last updated 2010.02.23 17:44:26



H22.6.18 現在のコメント
3つに分かれていたので,一つにまとめました。
結構きちんと書いたと思います。