2010年6月19日土曜日

ネット侵害:名誉毀損・・・儲かる?

ネット侵害:名誉毀損・・・儲かる?
[ ITC法:名誉毀損 ]


Last updated 2010.02.23 09:49:41
http://plaza.rakuten.co.jp/utuboiwa/diary/201002220003/

知財では,儲からないと

書いてしまいました。

では,名誉毀損では,どうか?

実は,名誉毀損は,かなり期待が持てる分野と思います。

損害賠償額も高額化傾向にあります(数百万円も珍しくない)。



名誉毀損の要件は,大雑把にいえば(これもかなり大雑把です)。

 1 名誉毀損性(名誉侵害性)

 2 公益目的・公共の利害

 3  真実性

 4 真実相当性

が必要となります。



 1は,名誉毀損被害者(被害者)が,あると 主張立証しなければなりませんが,



 2~4は,1があるとされた場合,名誉侵害者(加害者)が,あると主張立証しなけれなりません。



 簡単にいえば,被害者は,

  a 自分に対する(特定性) 

  b 事実を指摘して(事実摘示の有無,評価との違い)

  c 社会評価の低下

となる事実,名誉毀損性(名誉侵害性)を立証すれば足ります。

 c は,ネット上では,書き込みされた掲示板等を,キャプチャーして提示すれば,よいということになります。



 実は,ネット侵害の場合,a,bが難しい場合が多いです。

 

 a 特定性

   これは,匿名性ともいいますが,名誉毀損は,ある一定の人に対する侵害でなければなりません。

  例えば,●●人は,あほじゃ!

といっても,名誉毀損にはなりません(事実の摘示はあったとして・・・)。

 特定の人ではないからです。

 35歳の男

でも駄目です。そのような人は一杯いるからです。

 これを特定情報の有無といいますが,特定情報によって,ある一定の人の名誉を毀損していると認められる必要があります。



 例えば,第○代日本国内閣総理大臣

といえば,一人しかいません。したがって,この場合には特定性があるといえます。



 では,○○町立●●小学校の現在の校長先生

では,どうでしょうか?

 これは,○○町が,かなり田舎で,全く有名でない場合でも,町立●●小学校が一つしかなく,「現在」の校長先生は一人しかいないはずですから,こう書いてあれば,特定性が認められます。



 特定情報は,有名ではなくてもいいですが,ある一定の人のことをいっていると認められなければなりません。

 ネット侵害では,結構この要件が認められない場合も多いです。



 b 事実の摘示(事実と評価との違い)

  名誉毀損となるためには,「事実」が摘示されなければなりません。

  「評価」がされたに過ぎない場合には,基本的には名誉毀損により損害賠償等は認められません。



  実際は,「事実」と「評価」との区別は,極めて難しい問題となります。

  例えば,

   誰々は,アホじゃ!

というのは,どうでしょうか。

  これは,アホというのは,勉強ができるからアホではないとはいえないし,勉強ができないからアホともいえません。

  これは,「評価」と考えられます。



  誰々は,○○事件の犯人であり,殺人鬼である。

というのは,どうでしょうか?

 これは,○○事件の犯人であるという「事実」を摘示し,

  「殺人鬼」という表現で,

  ○○事件の犯人であるという「事実」を前提に,

  それを評価していることになり,

  名誉毀損となる典型的な事例です。

 このように,

  事実と評価とは,実際は,その区別が難しく,

  その判断は慣れていないと難しいということになります。

 安易に,名誉毀損!と言ったら,実は,評価にすぎなかったということもあり得ます。



c は,その事実摘示により,名誉の低下が生じた場合をいいます。

 ある特殊な判例を除いては,名誉毀損は,抽象的な危険犯と考えられています。

 そのため,例え,ブログに訪問者が全くない場合でも,公開されているものであれば,この要件を充たすものと考えられます。

 

 さて,名誉侵害性が認められた場合には,

 2~4は,加害者(名誉侵害者)が,あると立証する必要があります。



2は,簡単にいえば,それをいうことに公共性がある有益な言論であるということです。

 政治家等の公務員については,公共性があるとされます。

 私人でも,ある巨大な宗教団体の長に対して公共性があるとされた判例があります。



3は,摘示された事実は,「真実」であるということで,真実ならば,名誉毀損してもよいという真実の言論を重視した要件です。 有名な刑法学者團藤教授の言葉を借りれば,

  「証明可能な程度の真実性」が必要となります。

 ○○事件の犯人である

と指摘した場合は,証明可能な程度の資料をもって真実性を立証する必要があります。

 この真実性判断は,

  口頭弁論終結時(簡単にいえば,裁判で証拠が出せる最終段階)で,真実性があるか否かが判断されます。

 真実性が証明されれば,たとえ名誉毀損となっていても,損害賠償を払わなくてもよい,ということになります。

 安易に決めつけて資料もなくして名誉毀損をすれば,真実性がないということで,損害賠償等の責任を負うことになります。



4は,真実相当性で,若干これだけでは,わかりにくいですが,

要するに,

 真実ではないが,真実だと思って名誉毀損表現をしてしまった

という場合です。

  真実相当性が認められれば,これも損害賠償等の責任は負わないことになります。

  この真実相当性は,名誉毀損「行為時」で判断されます。

 

 いうなれば,行為時における真実性で,

  行為時における資料を基に,証明可能な真実性があったか否かが判断されます。 (後に判明した資料で結果的に真実でないとされたとしてもよい)

 例えば,刑事事件の被告人として,誰々が,裁判を受け,

  一審判決(地裁判決)が,犯人と認めた,この一審判決に基づき,犯人と書いた場合(ここが行為時点)

 更に,控訴され,控訴審判決では無罪が出てしまった場合が典型例です。

この場合,控訴審判決では無罪が出ていますので,地裁判決は間違いだった,真実性はなかったとされます。

しかし,刑事事件の場合は,証拠が厳密に扱われ,高裁でひっくり返されたといっても,その当時,地裁判決に沿って犯人だと書いたのですから,

  行為時において,真実相当性があった,

  つまり,真実であると信じることが相当であった

ということになります。

 いずれにしても,単純に信じたでは許されないということになります。

ちなみに,名誉毀損の被害者は,会社などの法人でもよいとされています。



 ネット侵害は,証拠が残ることが殆どです。

 単に口頭で名誉毀損であれば,言葉のニュアンスの違いによって,言った言わないが生じますが,ネット侵害では,このような心配は,余りありません。

 心配があるとすれば,いつの間にかサイトが無くなった(削除された)という場合でしょう。名誉毀損の場合は,今現在ある必要はありません。

 早めに,キャプチャーして(魚拓をとるというのでしょうか),証拠を確保しておく必要はあります。

 ネット侵害の特徴は,早くに証拠隠滅が可能ということが注意点となりますが,外は,他の名誉毀損の場合と,あまり変わりません。



現状では,ネット上の名誉毀損侵害は,書籍等と比べると金額も低くなりがちでしたが,今後は,高くなりこそすれ,極端に安くなるということにはならない傾向がみえます。

 ただ,名誉毀損の場合は,サイトの表現を取りやめるという請求,差止請求は,すぐにできるという訳ではありません。かなり厳しい要件が必要となります。この点が,侵害が認められたら,基本的に差止も認められる知財事件との大きな違いです。

 そう言う意味で,

  ネット侵害で限っていえば,

   知財事件は, 差止重視

   名誉毀損事件は,損害賠償重視

でいくのがよいと一般的にいえることになります。

Last updated 2010.02.23 09:49:41


H22.6.19現在のコメント
結構頑張って書いています。
名誉毀損の真実相当性
の要件については,誤解が多いので,厚めに書いています。