2010年6月17日木曜日

形式犯と実質犯

形式犯と実質犯
[刑事を考える]

Last updated 2009.11.27 19:45:29
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最近,

政治資金規正法違反の虚偽報告は,形式犯である

したがって,軽微だ

との見解がチラチラする。


形式犯とは,
刑法の教科書で最初で理解すべき基本概念の一つであるが,簡単にいえば,法益侵害(危険を含む)が存在しない場合においても法律が規定されているから,処罰されるという概念である。



「形式犯」の対立概念は,「実質犯」である。



一般に行政犯的な刑罰に多いと言われるが,刑法の教科書には,形式犯は存在しない,または,全て実質犯と理解すべきとする見解を前提にするものも多い。

これは罪刑法定主義の表れと考えて良い。



どういうことかというと,

例えば,殺人罪の法益は,人の生命である。これは,分かりやすく,実質犯であり,実際に法益を侵害された場合を処罰するための規定として,侵害犯といわれる。



実質犯には,侵害犯の他に,危険犯というものがある。



例えば,放火罪の法益は,人の生命,身体,財産等である。例えば,現住建造物放火罪(刑108条)は,典型的な危険犯といわれる。現住とは,人が住んでいるということであるが,燃えた場合(正確な法律用語は使っていないことは予め申し上げておく)は,たとえたまたま留守で,人が死ななくても「現住」として処罰されるということになる。



危険犯は,結果的に現実の侵害結果は生じなかったとしても,その危険があったということで,処罰されるということになる。



刑罰は,人権侵害の典型例であるから,処罰されるからには,それに応じた法益侵害が必要であるという共通理解があり,形式犯という概念は使わない,仮に,あるとしても,危険犯としての法益侵害があったという説明をするのである。





さて,それでは,政治資金規制法の定める刑罰規定は,形式犯であろうか。

結論を先に述べれば,到底形式犯とはいえず,危険犯と理解すべきであろう。法益侵害の危険性が何ら無いのに,規定された刑罰とは到底思えない。

政治資金規正法1条に,目的が規定されている。

 この法律は、議会制民主政治の下における政党その 他の政治団体の機能の重要性及び公職の候補者の責務の重要性にかんがみ、政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に 行われるようにするため、政治団体の届出、政治団体に係る政治資金の収支の公開並びに政治団体及び公職の候補者に係る政治資金の接受の規正その他の措置を 講ずることにより、政治活動の公明と公正を確保し、もつて民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする。


当該法律が保護・意図する法益を掲げているといってよい。

そもそも,

報告書等の虚偽記入は,5年以下の禁錮又は100万円以下の罰金(同法25条)

を筆頭とするかなり高めの法定刑も設定されてもいる。

法益侵害が何らないのにも関わらず,法律が単に規定されているから,処罰されるとすれば,罪刑法定主義にも反する違法・違憲な法律となることになるが,そうは考えないのである。



政治資金規正法の規定する刑罰規定は,形式犯ではない。

そして,その違反は,決して軽微ではない。

例えば,報告書の正確性が担保されなければ,法の目的が達成できないのは当たり前である。

単なる虚偽記載でないか!

直せば良いでないか!

などと喧宣する,マスコミ等の罪は,極めて重い。


Last updated 2009.11.27 19:45:29