2010年6月17日木曜日

刑事での事案の真相解明の限界

刑事の事実と民事の事実

よく,刑事事件をする意味として,
事案の真相を明らかにする
と言われます。

理想としては,良いのですが,
裁判所の前に
真実が現れやすい
のは,民事のほうではないかと思います。

それは,手続のシステムの問題ともいえます。


分かりやすい例を

刑事事件で,例えば,共犯Aと共犯Bがいたとします。

共犯Aは,公判でも事実を全て認め,証拠もA自身の調書も,
共犯Bの調書も全て争わず,取り調べの対象となり,検察官がいう起訴状どおりの判決となりました。


ところが,
共犯Bは,事実を公判の段階で否認し,
認めていたB自身の調書は,真実ではない。と言いました。
共犯Aの調書も真実が記載されていないということで,
裁判所も,共犯ABどちらの調書も証拠として採用しませんでした。


この場合,共犯Bの判決は,Aのそれとは異なることがあります。
共犯Aの判決では,共犯Bは犯人とされながら,
共犯Bの判決では,共犯Bは犯人ではない
ということも,あり得ます。



同じ事件のはずなのに,
異なる事実が(裁判上では)それぞれ
どちらも真実とされることになります。


これは,証拠能力の問題に大きく関係します。


証拠能力とは,簡単にいえば,証拠としての資格です。
いくら価値が高い証拠でも
証拠能力がなければ
裁判所は,証拠として認めて,
そこから事実を認めることはできません。



価値がある
というのは,
証拠能力があることを前提とした証明力の問題です。


刑事事件では,
証拠能力の規定が厳格で,
例えば伝聞証拠は,
原則,証拠能力がありません。
これは,概念が普通とは違います。
書面は,調書も含めて,伝聞証拠と考えてよいです。


しかし,民事事件は,証拠能力は余り問題とならず,
ぶっちゃけ,どのような証拠も取り調べの対象となります。


例えば,先ほどの例,
共犯Aの場合は,
証拠に同意
すれば,証拠能力が認められ,
証拠として取り調べの対象となります。

しかし,共犯Bの場合には,
同じ証拠を(価値あってもです)
使えないという事態が生じます。


民事の場合は,
証拠能力の概念が薄いので,
使ってくれるなとBがいっても
基本は関係無く証拠として使えます。


同じ証拠を使えない場合があることで
結論に差が出るということになります。


刑事の場合でも争いがなかったりすれば,
争いがないところまで一緒に審理して,
争いがあるところから分離してするように,
なるたけ齟齬がでないようにはしますが,


同じ事実関係のはずが,
違った結論が出てくるかもしれない
というのは,刑事訴訟手続で
避けられない
それでよい
という態度ということになります。




他に有名なものとして
違法収集証拠
というものがあります。
最高裁は,ある一定の要件を充たした場合,
証拠能力を否定しています。

いくら警察が殴ったりしても,
真実は真実だ!
ということには,本来は,なるはずです。

それが極めて証拠価値があっても
証拠能力が認められず,
証拠として使えない
場合を認めたものです。

証拠能力と証明力との違いの分かりやすい例です。


刑事訴訟法では,この証拠能力概念は
極めて重要な分野となっています。
毎年のように,伝聞証拠が司法試験で出ます。


受験生でも大丈夫かな?
という人もいますので,
もう一回書きます。

http://plaza.rakuten.co.jp/utuboiwa/diary/201006170001/