2010年6月22日火曜日

言いなりなのか?騙されてる?

言いなりなのか?騙されてる?

Last updated 2010.03.30 12:13:33
http://plaza.rakuten.co.jp/utuboiwa/diary/201003300001/


刑事弁護人の仕事で,

報道等で,よく弁護人の法廷での意見が載ります。



傍目には,なぜあんな無茶苦茶なことを言うんだ

という批判も散見します。



一応,これには答えた方がよいかと思いますので書きます。



まず,弁護人の仕事に,法的専門家としての擁護があります。

法的に問題があるならば,それを指摘し正当な法の適用を求めることが必要となります。



例えば,心神耗弱・心身喪失の問題です。

異常な結果が生じた場合に主張される場合が多いので,批判も多いところですが,異常な結果故に,正常な判断能力によってなされたのかが逆に問題となる場合があるのです。

本人が,そう言ってくれという場合も勿論あります。


しかし,弁護人の主張も単に主張です。

それに応じて,きちんと鑑定等をするか,主張だけで判断するかは,裁判官の責任となります。




また,被告人の擁護者として,たとえ頭の中で,そうでないと思っていても,弁護人は,被告人の言い分に沿って述べる必要があります。

勿論,私の場合は,言い分を鵜呑みにせず,徹底的に主張の正当性が通るかも視野に入れます。



そうでなければ,その主張が通らないとき,逆に嘘を言っている,反省していないということで,情状が重くなるからです。



しかし,それでも,言い分を曲げないのであれば,それを元にしなければならない仕事上の義務があります。



これは,弁護人のプロとしての義務です。もし,それが不本意ならば,弁護人を辞めればいいのです。引き受けた以上,誰から批判されようが果たすべき義務があるのです。



被告人が無罪といっているにも関わらず,有罪の答弁をする弁護人は不要です。

司法試験の最後の試験,二回試験の刑事弁護という科目で,これをすると,一発アウトと言われています。

弁護士会でも懲戒事由となります。

それは,刑事弁護の仕事を分かっていないと判断されるからです。 





弁護士が言わせているんだ!という意見も散見します。



しかし,これは余りないのではないかと思います。

なぜなら,事実を曲げて言えということは,証拠隠滅的行為にあたりますが,後で,被告人が弁護士に言えって言われたと言い出す可能性があるからです。



後でハシゴをおろされれば,被告人が嘘を言っていたという苦境に立つことは勿論,弁護人自身も職責を疑われる苦境に立つことになります。



弁護士の仕事は,被告人等本人と余りに一体化し過ぎると,よくない場合があります。


本人と全く同じことをいうのであれば,しかも法律の専門家として相応しくないことをいうのであれば,これも又弁護人としての意味がありません。


弁護士は,当然依頼者の利益を守ることが仕事ですが,本人一体化とは少し距離を置いて,冷静かつプロとしての立場の方が物事がよくみえることもあります。




なぜ,弁護士が必要か,なぜ凶悪な犯罪者にでさえ弁護人が必要なのかは,裁判という,お互いに立場・意見が異なる者が主張・証拠をぶつけ合い,中立的な裁判官が判断するという構造の問題でもあります。




検察官は,どのように被告人が可哀想な事案でも,普通は執行猶予が相当であるという求刑はしません。それも立場・意見が異なる職責故にあります。





死刑を求める検察官,

死刑の回避を求める弁護人,

死刑の判断をする裁判官

悩まないはずが,ありません(とおもいます)。

どのような小さい事件でも時に同じ悩みを持ちます。





被告人は,時に極めて孤独です。

警察に責められ,

検察官にも責められ,

新聞・テレビには叩かれ,

世間には叩かれ,

家族にも批判され,  

さらに見捨てられ,

離婚し,

誰も自分のことを聞いてくれないことも多々あります。



また,裁判は,証拠がなければ真実とみてくれません。


たとえば,道を歩いていたら知らない外国人に呼び止められて,そこでスープを飲んだら覚せい剤 が入っていた


という場合,本人が,幾ら覚せい剤の常習者であっても,その事実が真実であれば,これに関しては無罪です。



証拠はなくても,真実の場合があります。

裁判所の認定できるのは,あくまで訴訟上の真実ですので,本当の真実とは異なる場合があります。





弁護人ぐらい,

真実を聞いてやってもいいんじゃないか

仮に真実でなくても騙されてやってもいいんじゃないか

と,私は,思うようにしています。


意外と,ないんですけどね。

自分では有罪,本人は無罪という事案は。



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H22.6.22現在のコメント

刑事弁護人というのは,私選であっても割合自由です。

被告人が言いにくいことに代わっていうのが仕事ですが,言いなりになるという感覚になったことはありません。

話すことで

真実なら言えるはずじゃん

なんで思い出せないの?
おかしいじゃん

というやり取りを続けるのです。

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