2010年6月18日金曜日

依頼者の思惑と弁護士の思惑・・・必ずしも一致しない。

依頼者の思惑と弁護士の思惑・・・必ずしも一致しない。
[ 弁護士の仕事 ]

Last updated 2010.02.10 19:31:48
http://plaza.rakuten.co.jp/utuboiwa/diary/201002100000/

政治家の発言は,裏を読む必要があるので難しいが,政治ネタを書いても仕方がないので,あくまで法律の素材として使おうと思っている。

弁護士は,政治の専門家ではないので。



「政治資金の出所を不明にするなどの目的で意図的に虚偽の収支報告をしたことはない。」

(毎日jp 2010年2月9日 20時49分 更新:2月9日 22時55分

http://mainichi.jp/select/today/news/20100210k0000m040078000c.html)

の意味を明らかにしておきたい。



目的が構成要件化され,一定の目的があって初めて成立する犯罪を,目的犯という。

条文上,・・・・目的として等と,明記されるのが普通である。

刑法でいうと,内乱罪(刑法77条),通貨偽造の罪(刑法16章),文書偽造の罪(刑法17章)等,背任罪(刑法247条)等が,目的犯である。



政治資金規正法上の収支報告書虚偽記入罪は,故意犯ではあるが,目的犯ではない。

そのため,どのような目的であろうと,収支報告書に虚偽があることを知って,又は,虚偽であることを知らないが虚偽でも構わないと思って,作成すれば,故意があり,犯罪は成立するということになる。



目的は,情状には影響するが,犯罪の成立には影響しないということになる。





前記発言を,よく見ると,

「政治資金の出所を不明にするなどの目的で」

の部分のみを否定しているのか,

「意図的に虚偽の収支報告をしたことはない。」

の部分を捉えて,故意まで否定しているのかは,定かではない

と読める。



仮に,法廷における起訴状認否の段階で,こう述べれば,裁判所から釈明がとぶであろうし,故意を否定する,否認と捉えられる認否となろう。



マスコミへの発言であるから,こうなっているのであろうが,

起訴状の認否は,どこについて事実と違うかを明らかにして,争点を明確化する機能があるから,

弁護人としても気を遣うところである。



言い方によっては,誤解される虞もあるから,否認するなら否認するで,起訴状に記載がされていることについて,どこを否認し,どこを認めるか,それとも,全部否認するのかという部分を慎重に詰めていくことが,

公判段階での最初の弁護人の仕事である。





被告人が,公にマスコミ等を通じて発言しなければならない場合は,十分に打ち合わせをする必要がある。

公の発言が,情状に影響することもあるからである。



私が弁護人ならば,万一,情状を悪くなることも考えて,公に対する発言についても十分な打ち合わせをしておくと思う。

少なくとも打ち合わせの要求はすると思う。



弁護士は,目の前にある事件解決に必要なことを最優先してしまうことが多いので,依頼者の最終的な思惑とは必ずしも一致しないこともある。

あくまで,弁護士が提供できるのは,最終的な思惑実現のための一要素である法律上の思惑のみである。



依頼者の思惑>目の前にある事件の有利性,いうなれば弁護士の思惑

依頼者の思惑<目の前にある事件の有利性,いうなれば弁護士の思惑



どちらを取るかは,最終的には依頼者の判断となる。

いくら打ち合わせをしても,依頼者の思惑が分からないこともある。

事件についてのメリットデメリットが分かっていることが前提であるが,依頼者には依頼者の,政治上,経済上,商売上,人間関係上等様々な思惑があることが普通である。

法律上の思惑も,この最終的な判断の一要素にすぎない。



前記の発言は,事件の利益よりも,依頼者の思惑を,依頼使者自身が優先して選択したと捉えることも可能である。

Last updated 2010.02.10 19:31:48