2010年6月21日月曜日

弁護士ができること

Last updated 2010.03.08 18:01:20
http://plaza.rakuten.co.jp/utuboiwa/diary/201003080000/改訂(H22.6.21改訂)


「はじめに」 

 弁護士の上手な利用の仕方を,弁護士側から書いてみたいと思います。


弁護士は, 医者に比べると,気軽さがないと,よく言われます。自分では絶対風邪!と思って,病院に行き, 
風邪ですね 
と言われることも,よくあるかと思います。

勿論,風邪でない重大な病気は病院に行かないと分かりませんが,何か悪いことが起こったときに,直ぐに病院に行く気軽さはあります。費用にしても,初診料等も含んで3000円だったら,3割負担であれば,9000円です。診察時間にしても,5分,10分ということだって珍しくありません。


弁護士の場合,法律相談は, 1時間1万円  が相場です。



なぜ,弁護士には,このような気軽さがないのか,それも含めて色々考え,上手な弁護士の利用の仕方 を示せたら幸いです。

はじめに前提となる 

 法的紛争の特色  

を書きたいと思います。

「目次」
1. マイナスからの出発

2. マイナス→0にしかならないのが基本(完全解決の場合)

3. 0より更にマイナスになるのが普通

4. マイナスを最小限度に留めざるを得ない

5. 「負けてもいい」と法的手続

6. 結局,どうなんだ。

「本論」

1. マイナスからの出発

病気にしろ,法的紛争にしろ,マイナスからの出発というのは,御理解できるかと思います。何か不都合があるからこそ,専門家に相談しに行くのです。


どちらも,マイナスからの出発を,完全に直すことはできない,どうしようもない,手の施しようがない事案は,間違いなくあります。


例えば,普通の風邪は,直接に治す方法となると難しいはずです。脱水状態にならないように,苦しい咳を止めるように,熱を下げるように症状の緩和や,他の重大な病気に波及しないようにするのが医師の仕事ともいえます。



弁護士が関わる法的紛争も,同じようなことがあります。

どう不当と(一般的には,道徳的に)思われても,法律や確定した判例では,どうしようもないことがあります。この場合には,どうすれば,マイナスを緩和するか,他の重要なマイナスに波及しないことが,法律相談の主目的となります。 


そして,法的紛争の解決は,一般的な道徳観を問うものではありません。 
 
最終的には裁判所という力を借りてでも実行することができるか,という観点から,できるか,できないかを言わざるを得ません。できないことをできるなどと言う方が不誠実なのです。



2. マイナス→0にしかならないのが基本(完全解決の場合)

裁判で儲けようと考えても,普通は,そのような都合のよいものはありません。


法的紛争は,いざこざの解決です。相手が簡単に応じてくれれば問題とならないので,弁護士に依頼・相談する必要は何らありません。

   貸した金をスムーズに返してくれた
というのは,ある意味当然の結果(マイナス→0)に戻るだけなのです。


損害賠償にしても同じです。ある損害を被ったというマイナスを,金で解決するというのが,法的解決ですから,お金をもらっても,侵害結果(例えば,傷害)がお金に代わったというだけで,マイナス→0になったというだけです。 

  
日本には,懲罰的損害賠償というものがありません。

    基本は,マイナスを0に戻す

ということに留まるのです。

 この裁判の類型が,極めて多いと思います。


3. 0より更にマイナスになるのが普通  

 
医者の場合は,扱う対象が,命や健康です。何ものにも代え難い,幾ら費用を払ってでも,得るメリットがあります。


これは,マイナスがプラスに転じた場合といえましょう。



しかし,法的紛争の場合には,マイナスを解消するために,更に費用を払って,0に戻るだけです。

 
更に,費用を支払うことをマイナスと考えれば,完全に解決したとなっても,費用分については,0を超えたマイナスです。しかも,例えば,何ものにも代え難い命や名誉を侵害されたときに,裁判から得られるのは,必ずしも十分ではない,お金です。


マイナスを解消したからといって,実質的にはマイナスなのです。 


このような意味で,法的紛争を弁護士に依頼するときは,完全に解決しても,極端なことをいえば,常にマイナスになります。



弁護士費用については,よく聞かれますが,基本は,依頼者の負担となり,相手方から請求することはできません。損害賠償においては項目に弁護士費用が付けられますが,実際にかかった金額を認めてくれるわけではありません。


そして,訴訟にかかる費用は,弁護士費用だけでありません。


まず,そもそも,原告になれば,裁判所に納める印紙代・郵便切手代がいります。


訴訟中にも, 

   名誉毀損ならば,真実性立証資料の反論のための更なる資料

   知財や物の「瑕疵」ならば,それ自体を検討する技術的な文献の入手,コピー等

続けること自体に伴う必要な費用があります。

 
これらは,基本的には,相手方に請求することはできません。

制度導入について議論はありましたが,基本や現行法では,上記のとおりです。


4. マイナスを最小限度に留めざるを得ない
  
このように弁護士に依頼する場合は,

   最も完全に解決したとして,  マイナス→0 

   費用を考えれば,大マイナス→小マイナス

になるだけです。

 

医者とは異なり,プラスに転化するどころか,マイナス→0に戻すこともできない場合が多いのです。このような場合,マイナスを最小限度に留める方策を考える必要があります。

 
原告(請求する側)では,法的にはほぼ確実に無理な場合は勿論,勝つには勝っても,弁護士費用その他の費用を考えれば,費用倒れになる場合,相手に財産が全くなく満足が得られない可能性が多分にある場合が,あります。

 
この場合,マイナスを経済的利益だけで考えれば,マイナスを最小限度に留める方法は,訴訟をしないことです。

 
特に,原告(請求する側)では,得られるメリットと失うデメリットを真剣に考える必要があります。 



5. 「負けてもいい」と法的手続
 
よくあるのが,負けてもいいからやって欲しいという言われ方です。

  
これは,原告側(請求する側)では,よく問題になります。

  
この負けてもいいというのは,分析すれば,幾通りか,あります。 


1 法的に正しいのではなく裁判で道徳性等を問いたいという場合,

2 費用倒れでも,他のメリットが存する場合,

3 請求自体が,本来的には金で解決が得られない場合などです。



1は,幾ら法的には正しくても,許せないという場合です。

 しかし,私は,この種の事件で受任するのは極めて消極的です
(他の人は知りません)。


なぜなら,そもそも,裁判で争われるのは,法的紛争に必要な限度で,それ以上の道徳性等を問うものではないからです。幾ら,請求を拒む者が,道徳的に正しくなくても,社会的に正しくなくても,法的に正しいか否かのみが問われます。そして,道徳性のことを裁判でいっても,完全に無視されることになります。



2は,
そのメリットがお客様も理解し,弁護士も説明している場合は,受任の可能性が多々あります。費用倒れによるマイナスを負けとみる場合です。

 
例えば,費用倒れに終わっていいという場合も,貸倒損失の実績作り,反社会的勢力への対抗等それを上回るメリットがあれば,受任の価値があります。

 
費用倒れか否かの判断は,勝てればいいというものではありません。 

   継続的な費用は考慮しているか,

   執行費用は視野に入っているか

   得られるメリットが裁判をするメリットより,本当にあるか

という観点が必要となります。



3は,
例えば,名誉毀損事件です。

 
名誉毀損事件は,高額化傾向があっても,せいぜい数十万~数百万円です。 

 
名誉を重んじる人において耐え難い苦痛には,到底足りません。  

 
費用を考えれば,裁判で得られる金額は,全く合わないことも多々あります。

 
しかし,このまま放置してはいけない,払う費用を惜しまないという場合です。

1や2とよく似ているようですが,全く違います。



6. 結局,どうなんだ

  
結局のところ,弁護士との最初の相談は,上記1,2,3を見極めるところにあります。

 
1の場合は,私なら受任しません。

 
2の場合は,自営でもない個人ならば,費用倒れ以上のメリットは余り考えつきませんので,受任しない可能性が高いかもしれません。

 
3の場合は,費用以上のメリットについての話しを深くするということになります。

 
私は,上記を一応区別して相談には応じます。しかし,全て,止めておけ!みたいな話しをする方もいるかもしれません。

 
弁護士の説明不足の故に,いらないトラブルが起こることは不幸です。

 
弁護士としても,なるたけ,それに陥らない努力が必要になるところです。

Last updated 2010.03.08 18:01:20



H21.6.21現在のコメント
本ブログは,
広告用,情報提供用,論文ネタ練り用,記録用,単に書いてみたかった
など色々ですので,

少し分かりにくいものが入ってしまっています。

この回も,かなり分かりにくいですねえ。