2010年6月18日金曜日

否認における後退防衛ライン

否認における後退防衛ライン
[ 刑事を考える ]


Last updated 2010.01.26 13:06:19
http://plaza.rakuten.co.jp/utuboiwa/diary/201001250002/


刑事事件で,否認する場合
否認すべき後退防衛ラインがある。





全てを否認するか,

一部については認めるとしても,

どこまでを守り,どこまで後退するかが分かっていないと

どうにもならない。





誰々に何処何処で会って◎◎したという事実

が問題になる場合,



何処何処に行ったことさえも否認するか

行ったが会っていないとするか,

行って会ったが◎◎していないとするか

という防衛ライン後退ラインが分かっていないと,

後で辻褄が合わなくなるのである。





防衛ライン後退ラインを誰が設定するかの問題であるが,

弁護士が,

こうしておけ!と指示示唆することは,余りないのではと思う。



相手が,どういう証拠を握っているか分からないし,

後で,弁護士に,こう言え!と言われましたとされても不本意であるからである。



事実をねじ曲げていうとするのは,実はかなり難しい。

例えば,どこか違うところで他の人に会い,食事していました。

という事実と異なることをねじ曲げて言おうと口裏合わせまでしたとする。

しかし,この場合,何を食べたか,何を飲んだか,何を喋ったか,店は,どういうところか,店員は何人いたか,男か女か,メニューにどういうものがあったかなどを詳細に聞かれると答えがつまる。別々に調べられたら矛盾も出てくる。

経験していないことを詳細に語る想像力は殆どの人がなく,

そこまで詳細な口裏合わせを,事前にすることは極めて難しいからである。



結果的に真の事実を探る努力が

最も被疑者にとって有利になると信じているのが実情であろうか。

真の事実ならば,嘘を言うことなく,そのとおり言うだけであるから,精神的にも楽である。



民事の場合,どちらも真っ向から事実と異なることを言う場合が往々にしてある。

どっちが嘘を言っているのだが,嘘を言っていなければ打ち合わせも楽である。



全てをねじ曲げて準備するのはやったことはないが,かなり大変な作業を伴うことになる。ストーリーを作り上げなければならないからである。



民事の場合は,尋問の一発勝負という側面があるが,

刑事は,何度何度も供述の信用性が吟味される場合があるという側面があり,より問題はやっかいである。




少なくとも私の場合には,前にも書いたが,

否認する場合は,特に徹底的な反対尋問を行う。





言っていることが合理的かどうかを十分に吟味するのである。





本当に何処何処に行っていないというのであれば,アリバイ立証となるから,それについての裏付けが必要となる。

スケジュール帳にはどう書いてあるか,誰か他のところで会ったのかなどを丁寧に聞いていくことになる。





先ほどの例でいえば,後退防衛ラインを,

何処何処に行ったが誰々に会っていないという

所に定めるのは,普通は難しい。

相手が何処何処に行ったといっており,それに沿う証拠があれば,なおさらである。





とすると,後退防衛ラインは,何処何処に行き誰々と会ったが◎◎はしていないということになる。

しかし,ここまでラインが下がると,供述の食い違いがある場合の信用性が,前面的に出てくることになり,最初に,会っていないなどという否認調書がとられておれば俄然不利となる。





覚えていないという供述も余りよくない。

供述は,詳細なほど信用性が高まり,反対のことを言っている者が,より詳細に話せば話すほど,覚えていないという供述に信用性がなくなっていくからである。

調書にとるかどうかは別判断が伴うが,少なくとも,最も争点となっている事実について,覚えていないだけというのは,一般には不利に働く。





私は,

よく信じて下さい

と言われるが,

私が信じても,判断するのは検察官なり裁判官である。

とよく言う。



また,私の疑問が解決できないのに,検察官なり裁判官が,信じるとは思えない

とも言う。





無罪の被疑者(被告人)を信じることと,

プロの冷静な意見は,

別のものと思う。



そうだからこそ,

逆に被疑者(被告人)の言っていることを安易に信じない

スタンスに結果的になる。



いずれにしても,後退防衛ラインを,

本人も,弁護士も把握しておかないとならない場面は多い。

Last updated 2010.01.26 13:06:19