2010年6月18日金曜日

マスコミの世論調査に学ぶ尋問技術・・・質問が分からなければ

マスコミの世論調査に学ぶ尋問技術・・・質問が分からなければ
[尋問]

Last updated 2010.02.22 12:37:55
http://plaza.rakuten.co.jp/utuboiwa/diary/201002220000/


尋問の結果は,調書に記載されます。

尋問は,証言者の態度等が勿論重要です。
が,転勤等で交代したり控訴したりして裁判官が替わることもあり,証言者への印象等は,その場でのは変わります。

調書に記載された言葉もとても重要ということです。


調書は, 

質問と答え

が,一緒に載り,質問と答えとが一体化して証拠となります。



質問が明確ではない場合に答えたものが調書にのれば,その答えまでもが,有用な証拠価値を持ちません。

供述も,反対尋問による吟味がされます。

反対尋問のされない内容の供述は,証拠価値がないと一般的に言われるのは法曹の世界では,極めて共通した認識があります。



そのため,マスコミが時折行う
世論調査

には,尋問にたずさわるものから考えれば,

はっきり言って何ら価値がない

と思ってしまいます。



例と,推測を書いてみます。

朝日新聞社が20、21の両日に実施した全国世論調査(電話)によると、鳩山内閣の支持率は37%で、前回緊急調査(5、6日)の41%から下がり、内閣発足後初めて4割を下回った。不支持率は46%(前回45%)で横ばいだった。

http://www.asahi.com/politics/update/0222/TKY201002210317.html

asahi.com(朝日新聞社)  2010年2月22日2時0分配信



支持率が,37%,不支持率が,46%

です。すると,

どちらでもない率が,17%

ということになります。



どのような調査方法でされたかは,統計学的精査には極めて重要ですが,

 〈調査方法〉20、21の両日、コンピューターで無作為に作成した番号に電話をかける「朝日RDD」方式で、全国の有権者を対象に調査した。世帯用と判明した番号は3557件、有効回答は2161人。回答率61%。

と書かれています。



「朝日RDD」方式と書かれているが,中身は分かりません。

が,固定電話で,金曜日・土曜日に電話によりしたと読み取れます。



携帯電話が主流(固定電話を持たない世帯も多い)の世の中で,固定電話を持っている世帯ということに調査が限定されています。

また,固定電話をかけて,金曜日・土曜日に質問に応じる人ということになりますので,普通のサラリーマンが答えたということは少ないと思います。(自営業者も忙しいと思う)。



対象層も,当初から,かなり限定されていることになります。



「有権者」を対象としていますが,有権者とは日本国民に他なりません。

そのため,この調査方法を鵜呑みにすれば,少なくとも,電話で,

貴方は日本人ですか?

と聞いていることになります。

聞いていなけば,選挙権もない者に選挙のことを聞いているということになります。




肝心の

ここには,

どのような質問がされたか

は記載されていません。

しかし,ここで想像してみます。



支持率が,37%,不支持率が,46%

です。

すると,どちらでもない率が,17%

と,かなり,どちらでもない率が,比較的低い率で出ていると推測されます。



考えられる質問として,

1 支持する,支持しない,どちらでもない

の三択でする場合では,

どちらでもない

の率が高くなる傾向となります。



それほど強く支持する・支持しないでもなければ,どちらでもない

に流れがちだからです。



例えば,次の質問は,どうでしょうか。

2 強く支持する,やや支持する,やや支持しない,強く支持しない,どちらでもない。

 公平な感が一応しますが,質問の仕方・並べ方によっては,そうでなくなります。

例えば,ネガティブなことを聞いた上で,この質問をすると,支持しない方向に流れやすくなります。逆もそうですね。



3 支持する,やや支持する,ある程度は評価する,支持しない,分からない

かなり不公平な質問であることが分かります。

支持方向へ行くのが3択,不支持方向へ行くのが支持しないだけの1択となるから,当然,支持率が高めに出やすくなります。



先ほどのポジティブ・ネガティブの質問が先にあれば,余計率の数字が左右されることになります。

最初の三択を,全部支持にまとめれば,支持率は,かなり高くなります。

明確な不支持でなければ,やや評価という形で,支持に回ってしまいますので,思いとは反対の方向へ行くことになります。



電話では,その具体的なやり取りは分かりません。

どちらかというと支持しません

と言われたときに,仮に,

じゃあ,全然,評価するところもありませんか?

と聞かれると,大体全否定はできないなと思うから,

いや,そういうわけでもありません

と答えます。

すると,やや評価

というカテゴリーに入り,支持の中に入ってしまいます。



また,更に,「調査方法」の欄には,

世帯用と判明した番号は3557件、有効回答は2161人。回答率61%。

とあります。

この有効回数人数を,番号件数で割ると,回答率約61%

が出ます。



つまり,世帯用と判明した番号,これは,色々な話しをした後ということでしょう。

それで,答えてくれたものが,有効件数になっています。

しかし,この世論調査では内閣支持率以外の回答も記載されています。



本来ならば,ある項目については有効件数幾ら,他の項目では幾ら

と質問項目毎に,有効件数が出されるはずですが,そうはなっていません。



そうすると,例えば,

ある項目では,有効だったが,違う項目では,無効

という場合は,当初から有効件数に入れていない可能性があります。



尋問では,

質問・答えと続き,どのような質問がされた後に答えているかが分かります。

また,主尋問では誘導尋問は基本的に許されませんし,反対尋問で,供述者の吟味も可能です。



しかし,

マスコミが行う世論調査の類は,これらのことを何ら充たしていません。



知財事件,例えば,不正競争防止法の周知性・著名性が問題となる場合,また,商標や意匠について,消費者が,どのような点を重視したり目がいくかなどを,

アンケート

的なことをする場合があります。

この場合も,調査方法は極めて重要で,証拠としての価値を認めさせるためには,かなりの日数と費用がかかります。



マスコミは,このような日数はかけていません。厳密な調査は,かなり難しいということが体感として分かっていれば,

それだけで,大丈夫かな?

と思ってしまいます。



費用についても,自ずから,莫大なものとなるはずです。


調査というのは,極めて,その判断が難しいのです。

統計学的厳密さをもってすれば,世論調査は,まるで証拠価値がありません。



統計学的な正しさの判断には,調査方法について更に明らかにすることが不可欠です。



マスコミが行う世論調査は,逆にいえば,尋問の勉強となります。

人は,極めて誘導に乗りやすい生き物です。

また,正義等正しさを求める生き物でもあります。

自分をよく見せたいという欲もあります。

それらを踏まえないと尋問も失敗します。

裁判所向けには,世論誘導的な策が余り意味がありませんが,

マスコミには意味があるのでしょうか。


Last updated 2010.02.22 12:37:55