2010年7月6日火曜日

公取委ガイドライン:知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針1(私的独占及び不当な取引制限の観点から)

公取委ガイドライン:知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針1(私的独占及び不当な取引制限の観点から)
http://www.jftc.go.jp/dk/chitekizaisan.html


知的財産法と独占禁止法とは,関係が深いといえます。
(内部リンク:ドコモSIMロックと独禁法・・・ほんの触りだけ


公取委ガイドラインで詳しく,まとめておきます。
長いので,二つに分けます。

1. 私的独占及び不当な取引制限の観点から

2.不公正な取引方法の観点から
内部リンク:公取委ガイドライン:知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針2(不公正な取引方法の観点からの考え方)


ガイドラインは,行政解釈であり,絶対なものではありません。
そのために断定されないように,かなり慎重に書かれています。


また,そのために分かりにくくなっている部分もありますので,

行政解釈は,こうだ!

ということを示すために,思い切って削ぎ落とすことにし,幹を出すことにします。

なぜ?ここは長い?
という部分は,準備書面等にその間使えるようにするための
別の配慮からです。


今回,次回(公取委ガイドライン:知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針2(不公正な取引方法の観点からの考え方))の2回分は,一般向けではありません。

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・私的独占及び不当な取引制限の観点からの考え方

・・技術の利用に係る制限行為に対しては、独占禁止法第3条(私的独占又は不当な取引制限)又は第19条(不公正な取引方法)の適用が問題…になる。また、事業者団体…の場合には、第8条の規定に違反する…。

・・一定の取引分野は、…、技術市場又は製品市場における取引の対象、相手方、取引される地域、取引の態様等を踏まえ、当該行為の影響の及ぶ範囲に即して画定する…。

・・…「競争を実質的に制限する」とは、市場支配的状態(注10)を形成・維持・強化することをいう。

(注10)独占禁止法第2条第5項に規定する「一定の取引分野における競争を実質的に制限すること」の意義については、裁判例上、「市場における競争自体が減少して、特定の事業者又は事業者集団が、その意思で、ある程度自由に、価格、品質、数量、その他各般の条件を左右することによって、市場を支配することができる形態が現れているか、又は少なくとも現れようとする程度に至っている状態をいう」などとされている(東宝・スバル事件判決(昭和26年9月19日東京高等裁判所)及び東宝・新東宝事件判決(昭和28年12月7日東京高等裁判所)参照)ところ、このような趣旨における市場支配的状態を形成・維持・強化することをいうものと解される(平成19年3月26日審決(平成16年(判)第2号))。


・私的独占の観点からの検討

・・技術の利用に係る制限行為が、「他の事業者の事業活動を排除し、又は支配する」(独占禁止法第2条第5項)ものである場合には、私的独占の規定の適用が問題となる。

・・具体例
 
(1)技術を利用させないようにする行為

・…他の事業者に対し当該技術の利用についてライセンスを行わない(…拒絶と同視…高額のライセンス料を要求する場合も含む。…)行為や、ライセンスを受けずに当該技術を利用する事業者に対して差止請求訴訟を提起する行為は、当該権利の行使とみられる行為であり、通常は…問題とならない。

・…知的財産制度の趣旨を逸脱し、又は同制度の目的に反すると認められる場合には、権利の行使とは認められず、一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、私的独占に該当する…。

・・パテントプール…を形成している事業者が、新規参入者や特定の既存事業者に対するライセンスを合理的理由なく拒絶することにより当該技術を使わせないようにする行為は、他の事業者の事業活動を排除する行為に該当する場合がある。
<具体例>
○パチンコ機を製造するX社ら10社及びY連盟がパチンコ機製造に関する特許権等を所有し、そのライセンスなしにはパチンコ機を製造することが困難な状況にあったところ、X社ら10社がこれらの権利の管理をY連盟に委託し、X社ら10社及びY連盟が第三者にはライセンスをしないこと等の方法により新規参入を抑制していたことが独占禁止法第3条違反とされた(平成9年8月6日審決(平成9年(勧)第5号))。


・・ある技術が一定の製品市場における有力な技術と認められ、多数の事業者が現に事業活動において、これを利用している場合に、これらの事業者の一部の者が、当該技術に関する権利を権利者から取得した上で、他の事業者に対してライセンスを拒絶することにより当該技術を使わせないようにする行為は、他の事業者の事業活動を排除する行為に該当する場合がある。(横取り行為)


・・一定の技術市場又は製品市場において事業活動を行う事業者が、競争者(潜在競争者を含む。)が利用する可能性のある技術に関する権利を網羅的に集積し、自身では利用せず、これらの競争者に対してライセンスを拒絶することにより、当該技術を使わせないようにする行為は、他の事業者の事業活動を排除する行為に該当する場合がある。(買い集め行為)


・・多数の事業者が製品の規格を共同で策定している場合に、自らが権利を有する技術が規格として採用された際のライセンス条件を偽るなど、不当な手段を用いて当該技術を規格に採用させ、規格が確立されて他の事業者が当該技術についてライセンスを受けざるを得ない状況になった後でライセンスを拒絶し、当該規格の製品の開発や製造を困難とする行為は、他の事業者の事業活動を排除する行為に該当する。

・・…公共機関を誤認させ、当該技術によってのみ実現できる仕様を定めさせることにより、入札に参加する事業者は当該技術のライセンスを受けなければ仕様に合った製品を製造できない状況の下で、他の事業者へのライセンスを拒絶し、入札への参加ができないようにする行為についても同様である。



(2)技術の利用範囲を制限する行為

・…技術を利用する範囲を限定してライセンスをする行為は、権利の行使とみられる行為であり、通常はそれ自体では問題とならない。


・しかしながら、技術を利用できる範囲を指示し守らせる行為…は、…知的財産制度の趣旨を逸脱する等と認められる場合には、権利の行使とは認められず、一定の取引分野における競争を実質的に制限するときには、私的独占に該当することになる。



(3)技術の利用に条件を付す行為
 
・ある技術に権利を有する者が、当該技術を他の事業者にライセンスをする際に条件を付す行為は、その内容によっては、…、一定の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、私的独占に該当する…。


・・マルティプルライセンス…を行い、…当該技術を用いて供給する製品の販売価格、販売数量、販売先等を指示して守らせる行為は、これら事業者の事業活動を支配する行為に当たり得る。

<参考例>
○A商品の生産に利用できる栽培方法及び栽培装置に関する特許権等の専用実施権を取得したX協会が、協会員の当該商品の生産量を制限して需給調整を行うことで市況安定を図ることとし、その手段として、協会員との通常実施権許諾契約の中において、実施量は地区会議において決定し、理事会の承諾を得ること、実施権者が実施量を超えて生産したときは、契約を解除することができることなどを定め、これを実施している疑いが認められた事案において、X協会の行為は独占禁止法第8条の規定に違反するおそれがあるとされた(平成6年2月17日警告)。


・・…(必須技術)について、…代替技術を開発することを禁止する行為は、原則として、ライセンシーの事業活動を支配する行為に当たる。また代替技術を採用することを禁止する行為は、原則として、他の事業者の事業活動を排除する行為に当たる(注11)。

(注11)ライセンシーによる代替技術の開発又は採用を明示的に禁止する場合に限らず、…行わない事業者にのみ、著しく有利な条件を設定するなど、実質的にみて、代替技術の開発等を制限する場合も同様である。


・…必須技術について、…合理的理由なく、当該技術以外の技術についてもライセンスを受けるように義務を課す行為、又はライセンサーの指定する製品を購入するように義務を課す行為は、ライセンシーの事業活動を支配する行為又は他の事業者の事業活動を排除する行為に当たり得る。





・不当な取引制限の観点からの検討

技術の利用に係る制限行為が、「事業者が他の事業者と共同して、相互にその事業活動を拘束し又は遂行する」(独占禁止法第2条第6項)ものである場合は、不当な取引制限の規定の適用が問題となる。(特に、…パテントプールやクロスライセンス、マルティプルライセンス)…。


・・パテントプール

・・・パテントプールとは、「ある技術に権利を有する複数の者が、それぞれが有する権利又は当該権利についてライセンスをする権利を一定の企業体や組織体(その組織の形態には様々なものがあり、また、その組織を新たに設立する場合や既存の組織が利用される場合があり得る。)に集中し、当該企業体や組織体を通じてパテントプールの構成員等が必要なライセンスを受けるもの」をいう。


・・・パテントプールは、事業活動に必要な技術の効率的利用に資するものであり、それ自体が直ちに不当な取引制限に該当するものではない(なお、標準化に伴うパテントプールについては「標準化に伴うパテントプールの形成等に関する独占禁止法上の指針」(平成17年6月29日公表)参照)。



・・・しかしながら、一定の技術市場において代替関係にある技術に権利を有する者同士が、それぞれ有する権利についてパテントプールを通じてライセンスをすることとし、その際のライセンス条件(技術の利用の範囲を含む。)について共同で取り決める行為は、当該技術の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。

・・・また、これらの事業者が、プールしている技術の改良を相互に制限する行為や、ライセンスをする相手先を相互に制限する行為は、当該技術の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。

・・・一定の製品市場で競争関係に立つ事業者が、製品を供給するために必要な技術を相互に利用するためにパテントプールを形成し、それを通じて必要な技術のライセンスを受けるとともに、当該技術を用いて供給する製品の対価、数量、供給先等についても共同して取り決める行為は、当該製品の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。


・・・一定の製品市場において競争関係にある事業者が、製品を供給するために必要な技術についてパテントプールを形成し、他の事業者に対するライセンスは当該プールを通じてのみ行うこととする場合において、新規参入者や特定の既存事業者に対するライセンスを合理的理由なく拒絶する行為は、共同して新規参入を阻害する、又は共同して既存事業者の事業活動を困難にするものであり、当該製品の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。



・マルティプルライセンス

・・マルティプルライセンスとは、「ある技術を複数の事業者にライセンスをすること」をいう。


・・・マルティプルライセンスにおいて、ライセンサー及び複数のライセンシーが共通の制限を受けるとの認識の下に、当該技術の利用の範囲、当該技術を用いて製造する製品の販売価格、販売数量、販売先等を制限する行為は、これら事業者の事業活動の相互拘束に当たり、当該製品の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。

・・・また、同様の認識の下に、…「改良技術」…についてライセンスをする相手方、代替技術の採用等を制限する行為も、技術の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。


<具体例>
○X社が、ある地方公共団体の調達に係る公共下水道用鉄蓋について、X社の実用新案を取り入れた仕様が当該実用新案を他の事業者にもライセンスをすることを条件に採用されていたところ、X社が他の事業者6社に対してライセンスをするとともに、6社が当該地方公共団体に提出する当該鉄蓋の見積価格はX社の見積価格以上とすることとしたこと、X社及び6社の工事業者渡し価格及び工事業者のマージン率を決定したこと、X社の販売数量比率を20%とし、残りをX社及び6社で均等配分することとしたことなどが独占禁止法第3条違反とされた(平成5年9月10日審決(平成3年(判)第2号))。


・クロスライセンス

・・クロスライセンスとは、「技術に権利を有する複数の者が、それぞれの権利を、相互にライセンスをすること」をいう。クロスライセンスは、パテントプールやマルティプルライセンスに比べて、関与する事業者が少数であることが多い。

・・関与する事業者が少数であっても、それらの事業者が一定の製品市場において占める合算シェアが高い場合に、当該製品の対価、数量、供給先等について共同で取り決める行為や他の事業者へのライセンスを行わないことを共同で取り決める行為は、…当該製品の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。



・・技術の利用範囲としてそれぞれが当該技術を用いて行う事業活動の範囲を共同して取り決める行為は、技術又は製品の取引分野における競争を実質的に制限する場合には、不当な取引制限に該当する。


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