2010年7月10日土曜日

意匠権:絵を文字に!

意匠の新規性判断方法

意匠とは,簡単にいえばデザインです。

意匠権が特許庁に登録され,権利となるためには,

新規性

が必要です。


新規性の判断は,
まずは,公知文献との対比です。

意願2008- 22396「椅子」拒絶査定不服審判事件(不服2009-16632)
で,その方法をみてみます。

なお,拒絶査定不服審判とは,
特許庁での手続です。更に不服がある場合は,
知財高裁への審決取消訴訟
をする必要があります(これは成立し確定している)。



4 本願意匠と引用意匠の類似性についての判断

前記共通点及び差異点を総合し、意匠全体として、本願意匠と引用意匠が類似するか否か、すなわち両意匠の類似性について考察する。
まず、前記各共通点について検討すると、形態の全体の構成及び各部の具体的な態様において共通しているとした前記各態様は、この種椅子の構成態様として例を挙げるまでもなく多数見受けられ、両意匠にのみ共通する点であるとは言えないから、共通点はいずれも両意匠の類似性についての判断に与える影響が微弱であり、これら差異点を総合したとしても、両意匠の類似性についての判断を左右するものとなり得ない。
一方、前記各差異点が両意匠の類似性についての判断に与える影響を考察すると、差異点(1)については、この種椅子の分野において、脚部に角パイプ状の型材を用いたものも見受けられるが、形態の骨格的態様を形成し、脚部以外の構成部分と相乗して生じる意匠的な効果に影響を与える場合を考慮すると、本願意匠の前脚部と差異点(2)に係る背凭れ部の形態とを組み合わせた態様に本願意匠を特徴づける新規性が認められるから、その差異は、両意匠の類似性についての判断に影響を与えるものと言える。差異点(2)については、本願意匠の出願前に、背凭れ部パネルの左右の略筒状部の上端に、本願意匠のようにそれぞれ凹部を形成してバッグ等のハンガーとしている態様のものは見受けられず、本願意匠を特徴づける形態であり、また、使用態様において、背凭れ部の前後両面及び左右の上端は比較的目に触れやすい部位である点を勘案すると、その差異が両意匠の類似性についての判断に与える影響は大きいと言える。差異点(3)については、比較的目に触れやすい部位の態様についての差異であるから、両意匠の類似性についての判断にも影響を与えるものと言える。差異点(4)については、この種椅子の分野において、座面部の前縁部分のみを本願意匠のようにせり出した態様のものは見受けられず、本願意匠を特徴づける態様であるから、その差異は、両意匠の類似性についての判断に影響を与えるものと言える。そうすると、差異点(2)及び(3)は、比較的目に触れやすい背凭れ部の態様についての差異であり、これら差異点にかかる態様が相乗した意匠的な効果及びこのほかの差異点を総合した場合、差異点は、両意匠の類似性についての判断を左右するものと言うべきである。
したがって、本願意匠と引用意匠は、意匠に係る物品について共通しているが、両意匠の形態については、共通点よりも差異点の方が両意匠の類似性についての判断に支配的な影響を与えているから、両意匠は、意匠全体として互いに類似しないものと認める。



実は,この共通点と差異点を
文章で挙げる作業が,意匠では大変です。



意匠公報や公知文献,侵害訴訟なら現物をみながら,
文章を組み立てていく必要があります。

特許庁でも裁判所でも,この当事者が挙げたものとは違う箇所を
わざわざ取り上げません。

当事者が言ったことについてのみ,
共通点,差異点を判断することになります。


他に,このような性質を持つものとして,

著作権
図形商標

があります。

これに対して,
特許,実用新案は,請求項の文言で権利範囲が決められるのが大原則です。

元から文章で書かれていますので,
絵や写真,現物を見ながら,
ウムー
ということは(通常は)ありません。



意匠の判断は,著作権とは異なり,
見た目が重要です。

目に触れやすい

という判断は,意匠によくある特徴的なものです。


一見,一緒やん!
と思っても,
特徴的なところが見つかると,そこばかり目が行き
全然違うやん!

と思ったり,

依頼者が言っているのでは,どうも難しい
となっても,ここ言えるじゃん!

と思うときもあります。

逆もありますが…

審判になったり,裁判になったりするのは,
どうしても微妙…
というのが残ります。

いかに,上手に絵を文章で伝えられるかも,
重要なスキルとなります。


……………………………………………………