2010年7月28日水曜日

特許に限らない:専属管轄の影響「解釈」

特許に限らない:専属管轄の影響「解釈」

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知財高裁平成21年1月29日判決(平成20年(ネ)第10061号損害賠償請求控訴事件)

知財高裁第2部「中野コート」




5 原審のさいたま地裁は,平成20年5月21日,「特許権者である被控訴人A及び被控訴人Bは,被控訴人Cに対し専用実施権の設定を約したのであるから,被控訴人Cは,本件特許の実施につき独占的通常実施権を取得し,被控訴人Cは同実施権に基づいて控訴人との間において本件通常実施権の設定契約を締結したものということができ,そうすると,被控訴人Cは控訴人に対し,有効な通常実施権を設定したものということができるから本件通常実施権設定が無効ということはできない」などと判示して,一審原告たる控訴人の請求を棄却した。そこで,これに不服の控訴人が本件控訴を提起した。




民訴法6条1項によれば,「特許権…に関する訴え」については,東京地裁又は大阪地裁の専属管轄である旨が規定され,ここにいう「特許権に関する訴え」は,特許権に関係する訴訟を広く含むものであって,特許権侵害を理由とする差止請求訴訟や損害賠償請求訴訟,職務発明の対価の支払を求める訴訟などに限られず,本件のように特許権の専用実施権や通常実施権の設定契約に関する訴訟をも含むと解するのが相当である。そうすると,一審原告は東京都に住所を有し一審被告らはいずれも埼玉県に住所を有する本件訴訟の第一審の土地管轄は,民訴法6条1項によれば,東京地方裁判所に専属するということになるから,原判決は管轄違いの判決であって,取消しを免れない。


なお,被控訴人A(財団法人グリーンクロスジャパン)は,控訴人が管轄違いの主張をすることは信義に反し許されないと主張するが,専属管轄に違反するかどうかは,裁判所が職権で調査判断しなければならない事項であるから,原審において前記の被控訴人A主張のような事実があるとしても,上記判断が左右されるものではない。

3 よって,民訴法309条により,原判決を取り消して本件を管轄裁判所たる東京地方裁判所に移送することとして,主文のとおり判決する。

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縮小版

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「民訴法6条1項によれば,「特許権…に関する訴え」については,東京地裁又は大阪地裁の専属管轄である旨が規定され,ここにいう「特許権に関する訴え」は,特許権に関係する訴訟を広く含むものであって,特許権侵害を理由とする差止請求訴訟や損害賠償請求訴訟,職務発明の対価の支払を求める訴訟などに限られず,本件のように特許権の専用実施権や通常実施権の設定契約に関する訴訟をも含むと解するのが相当である。」(知財高裁平成21年1月29日判決(平成20年(ネ)第10061号損害賠償請求控訴事件))

そして,本件における土地管轄は,大阪地方裁判所であるから,明らかに管轄違いである。
早期の移送を求める。

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H22.7.28現在のコメント

判例のまとめは,してはいますが,知財事件特有のものは,
UPしていません。

ただ,
今回のは一般民事にも関するもので,かなりの影響があるものです。
そのため,本ブログにUPすることにしました。

経過は簡単にいえば,

原審は,民事事件として処理した
しかし,特許権事件がらみ
専属管轄に違反
(被告側が勝ったのに),もう一回やり直し
という事案です。




原審における経緯に関する一審被告の主張です。↓

2 被控訴人A(財団法人グリーンクロスジャパン)
(1) 管轄違いの主張に対し
原審裁判所は,平成19年11月5日の第4回弁論準備手続期日において,一審原告である控訴人に対し,「特許が無効である旨の準備書面を提出したが,それならば東京地裁知財部で争ってもらいたい。本件も東京地裁に移送する。原告はどうするか。」と質問した。これに対し,控訴人は,「特許の無効を主張しない。」と回答した。
また,原審裁判所は,平成20年1月30日の第6回弁論準備手続期日において,控訴人に対し,「裁判所はこれまで無効の主張はしないものとして手続を進めてきたが,今回の準備書面では,再び無効の主張をしている。裁判所としては,従前の経緯から無効の主張は事情としてしか考えないが,それでよいか。」と質問した。これに対し,控訴人は,「それでよい。」と回答した。
以上の審理の経緯から明らかなように,原審においては,原告の「本件特許の無効の主張をしない。」「そのため東京地裁知財部に移送して審理することも求めない。」という,控訴人の意思に基づいて,原審で審理が進められたものである。原審での審理の経緯を無視し,原判決が不当であると主張するのは,信義に反し許されるものではない。



一審被告が,信義則違反を言いたくなる気持ちも分かります。

しかし,専属管轄ということになれば,この結論は仕方がないと思います。


対処としては,

・特許絡みということであれば,東京地裁か大阪地裁に,早期に移送を求める。
・相手の主張に惑わされず,この判例を引用して,重要な結果が生ずることを求めることでしょうか。

原審の訴訟指揮に,素直にしたがっているだけでは,駄目ということになります。



実際,大阪の知財部でも,これって特許事件?
というものがあります。


逆にいえば,予備的請求なり,金額は小さくても損害賠償等で特許を入れれば,
大阪,東京でやらないと駄目?
ということにもなりかねませんが,
知財高裁は,
「特許権に関係する訴訟を広く含む」
と言っています。


後で覆るくらいならば,最初から移送を求めておくというのが無難でしょうか。

実務的には,かなり重要な判断と思います。
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