2012年7月15日日曜日

最高裁判決:不当訴訟による損害賠償

最高裁判例:不当訴訟による損害賠償

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最二小平成22年7月9日判決(平成21(受)1539,損害賠償請求本訴,同反訴事件)


「訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁,最高裁平成7年(オ)第160号同11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事193号85頁参照)。」

「原審の認定するところによれば,被上告人らが主張する本件横領行為等に係る小切手等の振出しや預貯金の払戻し等のほとんどについて,X2が自らこれを指示しており,小切手金や払戻し等に係る金員の多くを,X2自身が受領しているというのである。そうであれば,本訴請求は,そのほとんどにつき,事実的根拠を欠くものといわざるを得ないだけでなく,X2は,自らが行った上記事実と相反する事実に基づいて上告人の横領行為等を主張したことになるのであって,X2において記憶違いや通常人にもあり得る思い違いをしていたことなどの事情がない限り,X2は,本訴で主張した権利が事実的根拠を欠くものであることを知っていたか,又は通常人であれば容易に知り得る状況にあった蓋然性が高く,本訴の提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められる可能性があるというべきである。」

「しかるに,原審は,請求原因事実と相反することとなるX2自らが行った事実を積極的に認定しながら,記憶違い等の上記の事情について何ら認定説示することなく,被上告人らにおいて本訴で主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものであることを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たのにあえて本訴を提起したとはいえないなどとして,被上告人らの上告人に対する本訴提起に係る不法行為の成立を否定しているのであるから,この原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」


経過
X→Y :Y横領行為をした
一審 Y横領行為認めず,否定
二審 Yら反訴追加(不当訴訟)
X2の横領行為を積極認定,不当訴訟認めず

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縮小版

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「訴えの提起が相手方に対する違法な行為といえるのは,当該訴訟において提訴者の主張した権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠くものである上,提訴者が,そのことを知りながら,又は通常人であれば容易にそのことを知り得たといえるのにあえて訴えを提起したなど,訴えの提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められるときに限られるものと解するのが相当である(最高裁昭和60年(オ)第122号同63年1月26日第三小法廷判決・民集42巻1号1頁,最高裁平成7年(オ)第160号同11年4月22日第一小法廷判決・裁判集民事193号85頁参照)。」

そして,損害賠償請求の請求原因事実と相反することとなる提訴者自らが行った事実を積極的に認定した場合は,「記憶違いや通常人にもあり得る思い違いをしていたことなどの事情がない限り」,提訴者は,「本訴で主張した権利が事実的根拠を欠くものであることを知っていたか,又は通常人であれば容易に知り得る状況にあった蓋然性が高く,本訴の提起が裁判制度の趣旨目的に照らして著しく相当性を欠くと認められる可能性があるというべきである。」(最二小平成22年7月9日判決(平成21(受)1539,損害賠償請求本訴,同反訴事件))

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最縮小版(裁判所Webサイト判決要旨から)

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「損害賠償請求の請求原因事実と相反することとなる提訴者自らが行った事実を積極的に認定しながら,提訴者の記憶違い等の事情につき認定説示することなく訴えの提起に係る不法行為の成立を否定」することは最高裁判例に照らして誤りと解すべきである(最二小平成22年7月9日判決(平成21(受)1539,損害賠償請求本訴,同反訴事件))

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H22.7.21現在のコメント

不当訴訟は,要件がかなり厳しく裁判所もなかなか認めてくれません。

ほとんど無意味化と思われた最高裁判例基準が,少しは意味があるものと思わせた判例です。

諦めずに主張すべきという教訓にもなります。

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H230317現在のコメント

たくさんのアクセスありがとうございます。

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H240715追記
意外と人気ですが,この最高裁判決があっても,不当訴訟が簡単に認められるということになったわけではありません。

当たり前ですが,訴訟による権利実現は,もっとも尊重されるべきという大きな建前があります。

この大きな建前を前提にしても,不当な場合がある,損害賠償が認められる場合があるというのが,不当訴訟による損賠償請求です。

この最高裁判決の事案は,かなり不思議,つまり,原審が,自分で認めた主張において矛盾している(とおもわれる)事案です。一つが立てば,もう一つは・・という事案です。逆にいうと,ここまで事実認定がされないとダメともいえる裁判例ともいえます。

流れとしては,

最高裁判決・基準
→その後の裁判例:ほとんど認められない
→今回の最高裁判決,いや認められる場合あるやろ!

というものとなります。





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