2010年7月21日水曜日

著作権:「複製」・「翻案」の定義,それらの判断基準,「創作性」の意義「解釈基準,解釈」

著作権:「複製」・「翻案」の定義,それらの判断基準,「創作性」の意義「解釈基準,解釈」

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知財高裁平成22年7月14日判決(平成22年(ネ)第10017号,同第10023号著作権侵害差止等反訴請求控訴,同附帯控訴事件)


複製
「著作物の複製(著作権法21条,2条1項15号)とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう(最高裁判所昭和50年(オ)第324号同53年9月7日第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁参照)。ここで,再製とは,既存の著作物と同一性のあるものを作成することをいうと解すべきであるが,同一性の程度については,完全に同一である場合のみではなく,多少の修正増減があっても著作物の同一性を損なうことのない,すなわち実質的に同一である場合も含むと解すべきである。」

翻案
「また,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。」

判断基準
「そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著作権法2条1項1号),既存の著作物に依拠して創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないものと解するのが相当である(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。」

「このように,複製又は翻案に該当するためには,既存の著作物とこれに依拠して創作された著作物との同一性を有する部分が,著作権法による保護の対象となる思想又は感情を創作的に表現したものであることが必要である(著作権法2条1項1号)。そして,「創作的」に表現されたというためには,厳密な意味で独創性が発揮されたものであることは必要ではなく,筆者の何らかの個性が表現されたもので足りるというべきであるが,他方,文章自体がごく短く又は表現上制約があるため他の表現が想定できない場合や,表現が平凡かつありふれたものである場合には,筆者の個性が表現されたものとはいえないから,創作的な表現であるということはできない。」

「したがって,上記各控訴人書籍記述部分がこれに対応する上記各被控訴人書籍記述部分の複製又は翻案に当たるか否かを判断するに当たっては,当該被控訴人書籍記述部分が創作性を有する表現といえるか否か,創作性を有する場合に当該控訴人書籍記述部分がこれを再製したものであるか否か及び当該被控訴人書籍記述部分の表現上の本質的特徴を直接感得することができるか否かを検討する必要がある。」

「そこで,以上の見地から,原判決添付別紙対比表1について個別に検討することとする。」

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「著作権法は,思想又は感情の創作的表現を著作物として保護するものである(著作権法2条1項1号)から,思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体ではない部分又は表現上の創作性がない部分は,著作権法による保護が及ばない。すなわち,歴史的事実の発見やそれに基づく推論等のアイデアは,それらの発見やアイデア自体に独自性があっても,著作に当たってそれらを事実又は思想として選択することは,それ自体,著作権による保護の対象とはなり得ない。そのようにして選択された事実又は思想の配列は,それ自体としてひとつの表現を構成することがあり得るとしても,以上のとおり,原判決添付別紙対比表2記載の各被控訴人書籍記述部分の事実又は思想の選択及び配列自体には,いずれも表現上の格別な工夫があるとまでいうことはできないばかりか,上記各被控訴人書籍記述部分とこれに対応する各控訴人書籍記述部分とでは,事実又は思想の選択及び配列が異なっているのである。
したがって,上記各控訴人書籍記述部分は,これに対応する各被控訴人書籍記述部分と単に記述されている事実又は思想が共通するにとどまるから,これについて各被控訴人書籍記述部分の複製又は翻案に当たるものと認めることができないことは明らかである。」

「2 争点2(控訴人らによる控訴人の氏名表示権及び同一性保持権の侵害の成否)について」
「しかしながら,前記1で説示したとおり,そもそも控訴人らが被控訴人書籍を複製又は翻案したものであるとは認められないのである。
したがって,同一性保持権の侵害をいう被控訴人の上記主張は,その前提を欠くものであって理由がない。また,前記説示から明らかなとおり,被控訴人は,控訴人書籍の著作者ではなく,控訴人書籍は,被控訴人書籍を原著作物とする二次的著作物ともいえないから,被控訴人による氏名表示権の侵害に関する主張は,理由がない。」

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縮小版

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複製とは,
「著作物の複製(著作権法21条,2条1項15号)とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう(最高裁判所昭和50年(オ)第324号同53年9月7日第一小法廷判決・民集32巻6号1145頁参照)。ここで,再製とは,既存の著作物と同一性のあるものを作成することをいうと解すべきであるが,同一性の程度については,完全に同一である場合のみではなく,多少の修正増減があっても著作物の同一性を損なうことのない,すなわち実質的に同一である場合も含むと解すべきである。」(知財高裁平成22年7月14日判決(平成22年(ネ)第10017号,同第10023号著作権侵害差止等反訴請求控訴,同附帯控訴事件))

翻案とは,
「また,著作物の翻案(著作権法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。」(知財高裁平成22年7月14日判決(平成22年(ネ)第10017号,同第10023号著作権侵害差止等反訴請求控訴,同附帯控訴事件))

複製・翻案該当性の判断基準は,
「著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(著作権法2条1項1号),既存の著作物に依拠して創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらないものと解するのが相当である(最高裁判所平成11年(受)第922号同13年6月28日第一小法廷判決・民集55巻4号837頁参照)。」(知財高裁平成22年7月14日判決(平成22年(ネ)第10017号,同第10023号著作権侵害差止等反訴請求控訴,同附帯控訴事件))

また,
「上記各Y書籍記述部分がこれに対応する上記各X書籍記述部分の複製又は翻案に当たるか否かを判断するに当たっては,当該X書籍記述部分が創作性を有する表現といえるか否か,創作性を有する場合に当該Y書籍記述部分がこれを再製したものであるか否か及び当該X書籍記述部分の表現上の本質的特徴を直接感得することができるか否かを検討する必要がある。」(知財高裁平成22年7月14日判決(平成22年(ネ)第10017号,同第10023号著作権侵害差止等反訴請求控訴,同附帯控訴事件))

以下,別紙対比表を,個別に検討する。

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あてはめ部分

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・No.1について

①…,②…,…で共通している。

しかし,
①は,事実であり,②は,思想であって,
X書籍記述部分とY書籍記述部分とは,表現それ自体でない部分について同一性を有するにすぎないから,複製又は翻案に当たらない。


・No.2について

①…,②…,…で共通している。

しかし,上記共通点は,
…という事実を,
…というごくありふれた言葉を使って表現したものであって創作的な表現とはいえない。
したがって,X書籍記述部分とY書籍記述部分とは,表現それ自体でない部分又は表現上の創作性のない部分について同一性を有するにすぎないから,複製又は翻案に当たらない。


・No.3について

X書籍記述部分とY書籍記述部分とでは,
①…,②…,⑥…で共通しており,X書籍記述部分では,上記①ないし⑥の事実は概ねこの順序で記載されている。

しかし,X書籍記述部分の上記事実の選択及び配列自体に表現上の格別な工夫があるとまでいうことはできない。
むしろ,X書籍記述部分には,…があるのに,Y書籍記述部分には,…がなく,Y書籍記述部分には,…があるのに,X書籍記述部分には,…がないことに加えて,Y書籍記述部分では,上記事実が①,③,②,③,④,⑤,及び⑥の順序で記載されているため,両者は,事実の選択及び配列が異なっている。

別紙対比表・No.3に記載の各Y書籍記述部分の事実又は思想の選択及び配列自体には,いずれも表現上の格別な工夫があるとまでいうことはできないばかりか,上記各Y書籍記述部分とこれに対応する各X書籍記述部分とでは,事実又は思想の選択及び配列が異なっているのである。

したがって,上記各Y書籍記述部分は,これに対応する各X書籍記述
部分と単に記述されている事実又は思想が共通するにとどまるから,これについて各X書籍記述部分の複製又は翻案に当たるものと認めることができないことは明らかである。


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H22.7.21現在のコメント

実は,この基準は前にも書いています。⇩

たまには雑談,強引に著作権議論へ・・・ジャケットデザイン


知財高裁がはっきりと,
まとめました。

あてはめも重要ですのでパターン化しました。

これも文字化の重要性を示しています。

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