2010年7月16日金曜日

特許:サポート要件の適合要件,その主張立証責任「解釈基準,解釈」

特許:サポート要件の適合要件,その主張立証責任「解釈基準,解釈」

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知財高裁平成22年4月27日判決(平成21年(行ケ)第10296号審決取消請求事件(特許))

「特許法36条6項1号所定の要件について
(1) 特許法36条6項は,その柱書きにおいて「第2項の特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」とし,その第1号において,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している(以下「サポート要件」ともいう。)。
そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,サポート要件の存在は,特許出願人又は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。」(知財高裁平成22年4月27日判決(平成21年(行ケ)第10296号審決取消請求事件(特許)))

「(2) そこで,本件特許に係る特許請求の範囲の記載(甲36参照)が,明細書のサポート要件に適合するか否かにつき,以下検討する。」

「まず,本件特許発明が,発明の詳細な説明の記載内容にかかわらず,当業者が,出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものかどうかを検討するに,本件での全証拠を精査してもなお,本件特許発明につき,当業者が,その出願時の技術常識に照らし,赤身魚類の魚肉を上記一連の工程に付することにより,上記課題を解決できると認識できる範囲のものであると認めることはできない。」

「したがって,本件特許に係る特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するためには,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,同発明の詳細な説明の記載により当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであることが必要である。」

「(2) 本件特許に係る明細書(甲36)の発明の詳細な説明には,赤身魚類の魚肉を上記一連の工程に付することにより上記のような課題を解決し得ることを明らかにするに足る理論的な説明の記載はない。
また,発明の詳細な説明において実施例とされる記載のうち,実施例1では,ガスの充填工程で用いる炭酸ガスと酸素ガスの比率につき,それぞれ「20~50容積%」,「50~80容積%」という範囲で表記するのみで,具体的な容積%を特定して開示しておらず,低温処理工程での温度と時間も,「5~10℃」で「30分~3時間」という範囲で表記するのみで,具体的な温度と時間を特定して開示しておらず,いずれも特許請求の範囲の記載を引き写したにすぎないとも解されるものである(段落【0017】及び【0020】参照)。そして,実施例2及び3では,ガスの充填工程及び低温処理工程に関する実施例1の上記記載を引用するのみであり(段落【0023】【0034】【0035】参照),実施例4では,ガスの充填工程に関しては,「70容積%の酸素ガスと30容積%の炭酸ガス」(図1,図3に
関するもの)との記載があるものの,低温処理工程が実施されたとの記載はない(段落【0036】【0038】参照)。」
「そうすれば,上記発明の詳細な説明において実施例とされた記載のうち,実施例1ないし3は,ガスの充填工程及び低温処理工程のいずれについても,実際の実験結果を伴う実施例の記載とはいえず,実施例4についても,低温処理工程については,実際の実験結果を伴う実施例の記載であるとはいえず,実施例1ないし4以外に,実施例の記載と評価し得る記載もない。」

「このように,本件においては,前記一連の工程に該当する具体的な実験条件及び前記課題を解決したことを示す実験結果を伴う実施例の記載に基づき,前記課題が解決できることが明らかにされていない。」

「以上からすれば,特許請求の範囲に記載された本件特許発明は,明細書の発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が前記課題を解決できると認識できる範囲のものではなく,明細書のサポート要件に適合するとはいえない。」

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知財高裁の論理の流れ:

「本件特許発明が,発明の詳細な説明の記載内容にかかわらず,当業者が,出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものかどうか」
→そうでない場合
「特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,同発明の詳細な説明の記載により当業者が上記課題を解決できると認識できる範囲のものであることが必要である。」

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縮小版

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・特許法36条6項1号所定の要件(以下「サポート要件」という)について
サポート要件については,特許法36条6項柱書きにおいて「第2項の特許請求の範囲の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」とし,その第1号において,「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と規定している。
「そして,特許請求の範囲の記載が,明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものであり,サポート要件の存在は,特許出願人又は特許権者が証明責任を負うと解するのが相当である。」(知財高裁平成22年4月27日判決(平成21年(行ケ)第10296号審決取消請求事件(特許)))

・・発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か


すなわち,発明の詳細な説明の記載により課題解決を認識できないし,その記載や示唆がないのである。

・・出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものかどうか

そこで次に,「出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものかどうか」検討すべきことになる。



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H22.7.16現在のコメント

サポート要件についての主張立証責任は,
特許権者側にあるとするのが,知財高裁の見解です(争いあり)。


この知財高裁判決は,少し練られていない感じがします。

明細書の記載の範囲内か否かというのは,
非特許権者側でも,まあ容易にできます
(読解力の問題)

しかし,「当時の技術常識」でできるか否かについては,
できる!
と,いうのが主張立証責任が存するとされる
特許権者側で,キチンというとする方が自然ではないでしょうか。


縮小版については,
簡単な方と考えられる,
明細書記載の議論を先の項目にしました。
(知財高裁も前記基準では先に書いています。「また」でつながっていますので,こちらの方が自然と考えられます)。


この点はまだ深い議論がありますが,基準としては,取り敢えず良いかと思います。

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