2010年7月28日水曜日

特許:今一度知財高裁を考える。

今一度⇩

特許:進歩性の判断において,出願の後に補充した実験結果等を参酌することの可否「判断基準」

を考えます。

よく読みました。

一見過激とも思えますが,
そうでもないのではないかと思ってきました。

元々,
簡単にいえば,
明細書には,〜〜という例えば数値をもって,顕著な作用効果があるといっている
ものではありません。


実施可能要件違反とも異なります。

実施はできるが,顕著なだけじゃ分からないじゃないか!

というものです(ちょっと勘違いしていました)


そうなったので,
権利者側で,
ほれ,実験結果じゃ!
と出したものです。


実験としては,顕著な効果が出ているから
明細書のいうとおりじゃないか!
ということになります。

本則的な戦いとしては,

実験結果が信用ならん!
明細書にも記載のないものを混ぜたから結果がよく出ただけじゃないか!
とか,
実験結果に対して,明細書記載の請求項の構成の効果じゃない
と立証(この場合は再度実験をする必要がありましょう)することになりましょう。


この知財高裁判決も言っていますが,
元々作用効果自体は,特許の構成要件ではありません。


作用効果自体は,数値等で詳しく書かないでも,いい
(もちろんこの構成の場合はということになると思います)
実験で分かったんだからいい
という判断が必ずしも間違いとはいえないと思います。

実施可能要件違反の場合とは配慮すべきことが違うのではないかと思います。




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H22.7.28現在のコメント

ついでに追加して述べます。

この判例の事案では,

出願後に(限定)(特定)補正をしています。

また,

引用発明との相違点において,

本願発明では,
「0.1~4重量%の2-フェニルーベンズイミザゾール-5-スルホン酸であるUVB日焼け止め剤活性種を含む」

引用発明では,
「任意に通常のUV-Bフィルターを含む」
とされています。

構成としては,
引用発明 大>本願発明 小
ということになります(当たり前ですが)。

引用例では,
「その選択に全く制限がない」等の記載から,

本願発明のように「選定することは容易である」
としています。


しかし,引用例には記載がない構成について,顕著な効果があれば,
進歩性があったと考えてもおかしくありません。

ここに疑問を感じたのではないかと思いました。
(一感想です)


それで,
補正後に特定した構成に,顕著な効果があるのか?ということで,実験結果が問題になっています。


これと同じ「飯村コート」による判断で,
知財高裁平成21年2月18日判決(平成20年(行ケ)第10213号審決取消請求事件)
があります。

これは,
構成について引用例により,想到容易としたものです。
これについては,顕著な効果がことごとく否定されています。

実験しておらず顕著な効果が文献だけで議論されていると読めます。


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H22.7.31現在のコメント

知財高裁平成17年11月8日(平成17年 (行ケ) 10389号審決取消請求事件)との関係

この判例との矛盾性をいわれています。
この判例については,後で論じますが,
私には矛盾とまではいえないと思います。

この判例の事案は,併用効果の顕著な作用効果が問題になっています。
この併用効果については,

明細書に記載がなく,
それを認識できる記載または示唆する記載もないといえ,
矛盾がないと説明が可能です。

当該平成22年判例と平成17年判例は,
どちらも矛盾なく併存している
そうであれば,どのような説明が可能か
という立場を今のところは取るつもりです。

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H22.8.3現在のコメント

見つけましたので,
ついでに付記します。

知財高裁第4部「滝澤孝臣コート」

知財高裁平成22年5月26日判決(平成21年(行ケ)第10319号審決取消請求事件)は,

「この点について,原告は,平成21年6月23日に行った原告実験において,上記数値範囲の平均値である10バールの圧力の圧縮ガスを使用した方が,上記数値範囲位下の7バールの圧力の圧縮ガスを使用するよりも,ヘアトリートメント組成物の毛髪への分配が有意に優れることが確認されたと主張するが,そのような効果については本願明細書が記載するものではない上に,原告実験において,9ないし11バールという数値範囲のすべての部分でその効果が満たされること,また,その数値範囲を超える圧力の圧縮ガスを使用したものとの関係で臨界的意義があることも認められないものであって,原告実験をもって,本願発明の効果をいう原告の主張を採用することができない。
したがって,本件審決が本願発明の効果を看過したという原告の主張は,その前提において,理由がない。」

としています。審決は,平成21年6月21日ですので,出願後の実験です。

出願後実験が,そもそもできないのであれば,
「本願明細書が記載するものではない上に」
と書く必要がありません。
主張自体失当であるとしなければなりません。


「本願明細書が記載するものではない上に」
は,反対解釈すれば,

明細書に記載されていれば「原告実験をもって,本願発明の効果をいう原告の主張を採用」することができる余地がある。

と読めます。

これも,平成22年判例と矛盾しません。


平成17年判例の「塚原朋一コート」
平成21年判例の「滝澤孝臣コート」
が認めた基準を,

平成22年判例の「飯村敏明コート」が,基準として,まとめた

とも読めます。

「飯村敏明コート」は,結構このように明確に基準をまとめたりしますので,
基準として提示されているという意味が,大きいといえます。

もちろん,最高裁判断がないという今の状態での話しです。

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