2010年7月26日月曜日

意匠:意匠法3条1項3号にいう「類似」の判断主体,差異点・類否判断に対する影響「解釈基準,事実認定」

意匠:意匠法3条1項3号にいう「類似」の判断主体,差異点・類否判断に対する影響「解釈基準,事実認定」

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知財高裁平成21年1月27日判決(平成20年(行ケ)第10332号審決取消請求事件)

知財高裁第4部「田中信義コート」

意匠法3条1項3号にいう「類似」の判断主体は,意匠に係る物品についての一般の需要者・取引者であると解すべきところ,本願意匠及び引用意匠の意匠に係る物品である「基礎杭」及び「コンクリート杭」の一般の需要者・取引者とは,これらの建築用の杭を購入して使用する建設業者やそのような建設業者との間でこれら物品の売買を仲介する者などであるから,このような需要者・取引者は,建築用の杭の機能やその施工方法及び効果等を理解し,購入しようとする者であるということができる。
原告が本願意匠と引用意匠の看者として主張するところは,上記の「建築用の杭の機能やその施工方法を理解し,購入しようとする者」と一致するものと理解することができるから,その限度において正当であるということができる。他方,審決は,本願意匠と引用意匠の類否についての判断主体を明示的に認定してはいないものの,差異点(1)の検討において,「この種物品分野において,太径部と細径部の長さ方向の比率に差異のあるものが多数見受けられ,施工方法や施工場所により選択的に行われる変更の範囲であって,施工方法やその効果において差異があるとしても,意匠の形態としては観る者の注意を惹くほどの格別のものではなく・・・」と説示していることからすると,類否の判断主体としての「観る者」として,建築用の基礎杭やコンクリート杭の施工方法や施工場所を理解する者であって,基礎杭やコンクリート杭の形態の相違に応じて,施工方法やその効果において差異があることを認識し得る者を想定しているものと認められる。そうすると,審決は,実質的に,建築用の基礎杭やコンクリート杭の機能や施工方法及び効果等を理解し,購入しようとする者を本願意匠と引用意匠の類否を判断する主体(看者)としたものということができるから,審決が上記類否の判断主体の認定を誤ったものということはできない。

基礎杭やコンクリート杭の需要者・取引者は,段差部の形状に様々なものがあり得ることを知っているだけでなく,それが施工条件等に応じたものとして定まる機能的な側面から決定される事項であることを認識しているというべきであるから,原告主張に係る段差部の形状の差異は,需要者・取引者にとって,基礎杭等が必要な機能を果たすために必要となる形状の差異にほかならないから,このような差異が意匠的な観点から需要者・取引者の注意を惹くものということはできない。したがって,これらの点を差異点として認定したとしても,意匠全体の類似性の判断に影響を与えないものというべきであり,審決の結論に影響を及ぼすものではないから,取消事由3は理由がない。

…「水平方向の耐力を担う太径部と鉛直方向の支持力を担う細径部の長さをどのように設定するのがよいかは,主として施工場所の地盤の状況に応じて決定されるものであると認められ,杭長全体のどの部分に段差部を設けるかについても,このような技術的な検討に基づいて決定されるべきものであるところ,上記3のとおり,基礎杭の杭長は少なくとも4~13メートルの範囲ものがあり得るのであるから,需要者・取引者は,個別具体的な施工場所の施工条件に応じた杭長や段差部の設定,又は,一般的な施工条件に適合しやすい杭長や段差部の設定に関心を払うものと認められるが,その主たる関心は意匠のもたらす美感よりも,形態のもたらす機能的側面に向けられたものである。以上によると,審決が差異点(1)について両意匠の類似性についての判断に与える影響は微弱であると判断したことが誤りであるということはできない。」

「(ウ) 原告は,太径部が長いか細径部が長いかは,需要者・取引者にとって重要な判断材料になり,意匠の形態として注意を惹く旨主張するが,この点についての需要者・取引者の主たる関心が形態のもたらす機能的側面に向けられたものであることは上記のとおりであり,意匠の形態として注意を惹くものであるということはできないから,原告の主張は失当である。」

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縮小版

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・本件にいう「類似」(意匠法3条1項3号)の判断主体(需用者・取引者)について
本件需用者・取引者は,「本願意匠及び引用意匠の意匠に係る物品」である「◎◎」の一般の需要者・取引者である。

本件需用者・取引者は,
「意匠法3条1項3号にいう「類似」の判断主体は,意匠に係る物品についての一般の需要者・取引者であると解すべきところ,本願意匠及び引用意匠の意匠に係る物品である「基礎杭」及び「コンクリート杭」の一般の需要者・取引者とは,これらの建築用の杭を購入して使用する建設業者やそのような建設業者との間でこれら物品の売買を仲介する者などであるから,このような需要者・取引者は,建築用の杭の機能やその施工方法及び効果等を理解し,購入しようとする者であるということができる。」(知財高裁平成21年1月27日判決(平成20年(行ケ)第10332号審決取消請求事件))
と判示と同様の,需用者・取引者が機能や作用効果等を理解する者に他ならない。


・本件需用者・取引者における差異点に対する評価,その類否判断について

そして,この場合には,

「その主たる関心は意匠のもたらす美感よりも,形態のもたらす機能的側面」に向けられるものであるから,その差異点に対する評価,その類否判断においても,需要者・取引者にとって,「必要な機能を果たすために必要となる形状の差異にほかならないから,このような差異が意匠的な観点から需要者・取引者の注意を惹くものということはできない。」(知財高裁平成21年1月27日判決(平成20年(行ケ)第10332号審決取消請求事件))という観点からの判断が不可欠となる。


本件での差異点1における形状の差異は,

・・・・

という必要な機能を果たすために必要となる形状の差異に他ならず,
意匠的な観点から,需用者・取引者の注意を惹くものではない。



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H22.7.26現在のコメント

縮小版は,準備書面等で使えるように,まとめてみました。
(長目のほうが使いやすい)

この判例で重要なのは,意匠権成立ないしその効果を否定する場合に,
「必要な機能を果たすために必要となる形状の差異」か否かという立証のヒントを与えている点です。

形状が機能的側面しか有さないという立証をすることで,
取引者・需用者の感心を惹く意匠としての美観の判断に影響しない,類似として認めるべきでない
という主張が可能となります。


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