2010年7月14日水曜日

特許:「特許出願前に頒布された刊行物への該当性」(特許法29条1項3号)「解釈基準,事実認定要素」

特許:「特許出願前に頒布された刊行物への該当性」(特許法29条1項3号)「解釈基準,事実認定要素」

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知財高裁平成22年6月29日判決(平成21(行ケ)10323,審決取消請求事件)

・ 本件特許出願前に頒布された刊行物への該当性

「甲1は,洗濯機の製造業者である松下電器が,全自動洗濯機 に NA-F55A2
ついて作成した「 (テクニカルガイド)」である。 Technical Guide甲1は,以下のとおり,本件特許出願前に頒布された刊行物(特許法29条1項3号)に該当する。」



・本件特許出願前の配布 1

「甲1は 以下のとおり 本件特許出願日前に配布されたものと認められる。
甲1の表紙に 発行 平成5年2月 と表記されていることから 甲1は遅くとも平成5年2月末日以降,サービス業者に配布されていたものと推認される。

「そして
①平成4年 1992年 12月9日付け電波新聞23面 甲4には,甲1に掲載された洗濯機 が平成5年(1993年)2月 NA-F55A2 1日から発売される旨記載されており,
②日建が洗濯機 を購入 NA-F55A2した際に製品に付属していた取扱説明書(甲5)の「お買い上げ日」欄には「5-1-29 (平成5年1月29日を意味する )と押印されており,
③ 日建が購入した洗濯機 (甲6)の銘板には「 - 月期製」と NA-F55A2 93.1 6表示されており,
④松下電器作成の「' 秋総合カタログ (甲7)には, 93 」洗濯機 が掲載されており,同カタログの掲載内容は平成5年9 NA-F55A2月1日現在のものである旨が記載されている。」

「これらの事実を総合すれば,洗濯機 は,遅くとも平成5年2 NA-F55A2月中には販売されていたものと認められ,そうすると,同洗濯機のテクニカルガイドである甲1も,遅くとも平成5年2月末日以降サービス業者等に配布されていたものと認められる。これに反する証拠はない。
したがって,甲1は,少なくとも本件特許出願日である平成5年10月29日の前に配布されたものといえる。」



・頒布された刊行物への該当性 2

「甲1は,以下のとおりの理由から,頒布された刊行物(特許法29条1項3号)に該当する。」

「特許法29条1項3号所定の「刊行物」を「頒布」するとは,不特定の者に向けて,秘密を守る義務のない態様で,文書,図面その他これに類する情報伝達媒体を頒布することを指す。」

「そこで,甲1につき,頒布の対象者及び秘密保持契約の有無の観点から検討する。」

・・頒布の対象者について

「 甲1は その内容 体裁 作成者に照らすと 主として 製品 洗濯機の販売・配送・施工・修理等を行うサービス業者等の便宜のために,製造業者である松下電器により作成されたガイドブックである。弁論の全趣旨によれば,松下電器は,日本全国にわたって膨大な数量の洗濯機を販売していたことがうかがわれ,松下電器の洗濯機について販売・配送・施工・修理等を行うサービス業者等は,日本全国に多数存在し,松下電器の直営店だけでなく,中小電器店や家電量販店など,規模や業態も様々であったものと認められる。本件全証拠によるも,甲1のテクニカルガイドについて,通し番号を付すなどして管理されていたことや,配布先を特定して管理されていたこと,又は第三者への再頒布や開示が禁止されていたこと等の事実を認めることはできない。そうすると,甲1の配布の対象者ないし所持者は,不特定の者であったと解するのが相当である。」

・・秘密保持契約の有無について

「甲1の作成者である松下電器とサービス業者との間で,甲1の記載のすべて又は一部について,明示の秘密保持契約を締結した事実を認めることはできない。甲1のようなテクニカルガイドは,サービス業者の便宜のために頒布されるものであって,顧客(消費者)に交付されることは想定されていない(乙1 。しかし,そのような趣旨で作成されたものであったとしても, )そのことから直ちに,甲1について秘密保持契約が締結されていたと認定することはできない。」

「のみならず,甲1について,黙示にも秘密保持契約が締結されていたと認定することはできない。すなわち,甲1には,以下のとおり,公知の事項が多数含まれており,仮に,秘密保持契約を締結するのであれば,守秘義務の対象を特定するのが自然であるが秘密として取り扱うべき事項の特定がされた形跡はない。この点を詳細にみると,甲1が対象とする洗濯機 の取扱説明 NA-F55A2書(甲5)及び同洗濯機(甲6)に表示された事項は,公知となっているところ,甲1には,これらの事項が記載されている。例えば,甲1の「定格 (1,4頁)に記載された事項は,取扱説明書(甲5)の「仕様」及 び洗濯機 (甲6)の「家庭用品品質表示法による表示」に記載 NA-F55A2されており,甲1の「ソフト仕上げ剤仕様目安 (11頁)に記載された 」
事項は,同洗濯機(甲6)の「洗濯容量 水量 ソフト仕上剤量の目安」に記載されており,甲1の「異常報知(自己診断機能 (25頁)に記載 ) 」された事項は 同洗濯機 甲6 の タイマー表示部に E が表示され,ブザーが鳴る場合 に記載されており 甲1の メッセージと操作内容「●予約運転はタイマーでセットできます (18頁)に記載された事 項は 同洗濯機 甲6 の 予約タイマーの使用方法 に記載されている
仮に,甲1の作成者が配布先に対して守秘義務を課すのであれば,公知の
事項も含まれる甲1の記載事項のうちで秘密とすべき対象を特定するのが
自然であるが,そのような特定は何らされていない。したがって,甲1に
記載された事項の全部又は一部について,守秘義務を負う旨の明示又は黙
示の秘密保持契約がされていたものと認めることはできない。」

「甲1の記載には,設置要領(8ないし9頁 ,電器回路図(12頁 , ) )
分解要領(20ないし23頁 ,故障診断(24ないし26頁 ,部品の標 準卸価格と定価(27頁ないし34頁)など,顧客(消費者)に知らせる必要のない事項等が含まれている。しかし,このような事項であっても,顧客(消費者)に開示されたからといって,製造業者及びサービス業者の業務に支障を来すものとはいえず,また,前記のとおり,上記情報を秘密として取り扱うべき旨を指示した記載がされていないことを総合すると,上記事項に秘密性はない。」

「以上のとおり,甲1について秘密保持契約が締結されたことは認められ
ず,甲1に記載された事項は,顧客(消費者)との関係も含めて,秘密性はない。」

・・本件特許出願前に頒布された刊行物への該当性 3

「以上のとおり,甲1は,本件特許出願前に配布されたものであり,頒布さ
れた刊行物に該当するから,本件特許出願前に頒布された刊行物(特許法2
9条1項3号)に該当する。」

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縮小版

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「特許出願前に頒布された刊行物への該当性」(特許法29条1項3号)については,「本件特許出願前の配布」の事実認定,「頒布された刊行物」(特許法29条1項3号)への該当性を検討する必要がある。そして,「特許法29条1項3号所定の「刊行物」を「頒布」するとは,不特定の者に向けて,秘密を守る義務のない態様で,文書,図面その他これに類する情報伝達媒体を頒布すること」であり,「頒布の対象者及び秘密保持契約の有無の観点から検討」を要する(知財高裁平成22年6月29日判決(平成21(行ケ)10323,審決取消請求事件))。


・本件特許出願前に頒布された刊行物への該当性

甲◯は,以下のとおり,本件特許出願前に頒布された刊行物(特許法29条1項3号)に該当する。

・本件特許出願前の配布

・頒布された刊行物への該当性
・・頒布の対象者
・・秘密保持契約の有無

・本件特許出願前に頒布された刊行物への該当性

以上のとおり,甲◯は,本件特許出願前に配布されたものであり,頒布された刊行物に該当するから,本件特許出願前に頒布された刊行物(特許法29条1項3号)に該当する。



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H22.7.14現在のコメント

項目を考えることは重要です。

判例に沿った整理をしておけば,裁判所に上手く受け入れられるものと思います。


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