2010年7月22日木曜日

特許:実施可能要件における主張立証責任,理論的位置付け「解釈」

特許:実施可能要件における主張立証責任,理論的位置付け「解釈」

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知財高裁平成19年10月31日判決(平成18年(ネ)第10040号等特許権侵害差止請求権不存在確認請求控訴事件)

「ア 本件特許明細書の図6及び図7並びに上記各記載によれば,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,①薄膜トランジスタを用いた保護回路が,保護回路として機能するためには,正常な駆動電圧は通過させるが,過大な電圧は通過させず,適切にバイパスさせるものでなければならないこと,②図6,図7に示した回路構成において,R1とR2の抵抗値を選択して薄膜トランジスタのソース・ドレイン間の電圧とゲート電極の電圧を適正な値に設定することにより,このような動作が可能とされていることが記載されているということができる。」

「イ 本件特許発明が保護回路として機能しないこと(1審原告の主張オ(産業上利用することができる発明でないこと)(ア)及び(イ)(原判決13頁12行~22行))は,1審被告において明らかに争わないから,これを自白したものとみなす(なお,自白が錯誤に基づくものとは認められない。)。そうすると,アクティブマトリクス型表示装置の表示部にかかる過大な電圧を速やかに取り除くという本件特許発明の目的は達成できないことになる。」

「上記ア及びイによれば,本件特許明細書の発明の詳細な説明欄には,R1とR2の抵抗値を選択して,正常な駆動電圧は表示装置に通過させるが,過大な電圧は通過させず,適切にバイパスさせて,アクティブマトリクス型表示装置の表示部を静電気等の高電圧による破壊から保護するという本件特許発明の課題を解決する手段が,具体的に説明されているとはいえないと解される。」

「したがって,本件特許発明における保護回路がその機能を果たすための技術事項が,本件特許明細書の発明の詳細な説明において,当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているとはいえず,発明の詳細な説明の記載は,特許法旧36条4項に規定する要件を満たしていない(なお,1審原告の主張オ(ア)及び(イ)は,実施可能要件違反(特許法旧36条4項該当性)を基礎付ける事実を主張するものと理解できる。)。」

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縮小版なし

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理論的説明(H22.7.22現在)


実施可能要件違反(特許法36条4項1号)は,特許権者に主張立証責任があるとされる。
つまり,自らの特許権が,実施可能要件違反に該当しないことを,
特許権者が主張立証すべきということになる。

が,ことは単純ではありません。

上記知財高裁判決は,
「基礎付ける事実」という用語を使用し特許権者の自白を認めている。

これは,一般的には,
実施可能要件違反それ自体は,規範的要件とみて,
一段下の
実施可能要件違反を基礎付ける事実
つまり,
実施可能でない(またはある)と評価が可能な具体的事実自体を
要件事実とする見解と考えられる。

また,更に,この実施可能要件違反を基礎付ける事実を,
評価根拠事実
とみれば,知財高裁は,
実施可能要件違反に関する主張立証責任が
被疑侵害者にあると考えているとも読める。

また,
被疑侵害者による先行自白とも読めるので,

これだけでは判断は困難です。

もう少し議論後考えます。

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