2010年7月16日金曜日

特許:訂正審判請求の可否(訂正の可否基準)「解釈基準」

特許:訂正審判請求の可否(訂正の可否基準)「解釈基準」

……………………………………………………


知財高裁平成22年7月15日判決(平成22年(行ケ)第10019号審決取消請求事件)

・はじめに
本件特許は,平成4年7月13日に出願されたものであるから,その訂正審判請求の可否は,平成6年改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)126条1項に基づいて判断されるところ,同項には,「特許権者は,第百二十三条第一項の審判が特許庁に係属している場合を除き,願書に添付した明細書又は図面の訂正をすることについて審判を請求することができる。ただし,その訂正は,願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならず,かつ,次に掲げる事項を目的とするものに限る。
一特許請求の範囲の減縮
二誤記の訂正
三明りょうでない記載の釈明」と規定されている。

審決は,本件訂正審判請求について,「訂正事項aは,特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である『歯部』について『内周側が連結された』とあったのを『内周側が絶縁性樹脂を介して連結された』と限定するものであって,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当」(審決書4頁15行~18行)すると認定し,本件訂正が,いわゆる訂正の目的要件に適合することを認めている(この点は,当事者間に争いはない。)。その上で,審決は,内周側が絶縁性樹脂を介して連結されたとする本件訂正が,「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」のものであるか否かを判断している。そうすると,本件訂正前の請求項1記載の発明における「内周側が連結された歯部」は,「内周側が絶縁性樹脂を介して連結された歯部」と「内周側が絶縁性樹脂を介さないで連結された歯部」との両方を含んでいたことについて,本件訴訟において,当事者間に争いはないことになる。

・「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲」の意義について
旧特許法126条1項は,訂正が許されるためには,いわゆる訂正の目的要件(本件では特許請求の範囲の減縮)を充足するだけでは足りず,「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であることを要するものと定めている。法が,いわゆる目的要件以外に,そのような要件を定めた理由は,訂正により特許権者の利益を確保することは,発明を保護する上で重要ではあるが,他方,新たな技術的事項が付加されることによって,第三者に対する不測の不利益が生じることを避けるべきであるという要請を考慮したものであって,特許権者と第三者との衡平を確保するためのものといえる。
このように,訂正が許されるためには,いわゆる目的要件を充足することの外に,「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であることを要するとした趣旨が,第三者に対する不測の損害の発生を防止し,特許権者と第三者との衡平を確保する点にあることに照らすならば,「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であるか否かは,訂正に係る事項が,願書に添付された明細書又は図面の特定の箇所に直接的又は明示的な記載があるか否かを基準に判断するのではなく,当業者において,明細書又は図面のすべてを総合することによって導かれる技術的事項(すなわち,当業者において,明細書又は図面のすべてを総合することによって,認識できる技術的事項)との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準に判断するのが相当である(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号平成20年5月30日判決参照)。


以上によれば,旧特許法126条1項ただし書の規定のうち,「願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」との要件に適合しないことを理由とする審決の認定判断,すなわち,「訂正事項aが,本件特許明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入しないものとはいえない。したがって,訂正事項aは,特許明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものとは認められない。」(審決書7頁26行~30行)とした審決の認定判断には,誤りがある(なお,訂正事項bについての審決の判断も同様に誤りがあることになる。)。その他,被告は,縷々反論するが,いずれも採用の限りでない。

……………………………………………………

縮小版

……………………………………………………

・訂正審判請求の可否(訂正の可否基準)

本件特許は,平成4年7月13日に出願されたものであるから,その訂正審判請求の可否は,平成6年改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)126条1項に基づいて判断される。

・ 「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲」の意義について
旧特許法126条1項の「願書に添付された明細書又は図面に記載した事項の範囲内」であるか否かは,

「訂正に係る事項が,願書に添付された明細書又は図面の特定の箇所に直接的又は明示的な記載があるか否かを基準に判断するのではなく,当業者において,明細書又は図面のすべてを総合することによって導かれる技術的事項(すなわち,当業者において,明細書又は図面のすべてを総合することによって,認識できる技術的事項)との関係で,新たな技術的事項を導入するものであるか否かを基準に判断するのが相当である」(知的財産高等裁判所平成18年(行ケ)第10563号平成20年5月30日判決参照,知財高裁平成22年7月15日判決(平成22年(行ケ)第10019号審決取消請求事件))。


……………………………………………………
H22.7.16現在のコメント

訂正の可否基準です。

新法下でも同じ基準と考えていいです。

……………………………………………………