2010年7月21日水曜日

商標:著名商標との類否判断「解釈基準,事実認定」

商標:著名商標との類否判断「解釈基準,事実認定」

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知財高裁平成22年4月27日判決(平成21年(行ケ)第10152号審決取消請求事件(商標))



1 商標の類否の判断手法について
(1) 商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である。
また,商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,したがって,上記3点のうち1点において類似するものでも,他の2点において著しく相違するなどして,取引の実情等によって,商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを類似商標とすべきではない(前出最高裁昭和43年2月27日判決参照)。
さらに,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されない(前出最高裁昭和38年12月5日判決及び前出最高裁平成20年9月8日
判決参照)。

(2) 本件において,原告は,本件商標が「被服」に表示された場合,取引者及び需要者は,当該商品についてラルフローレンのデザインに係るポロ・ラルフローレン商品の一群として理解し,被告の商品とは認識しないから,本件商標が使用された商品につき,その出所に混同を生ずるおそれはなく,外観,観念や称呼を比較するまでもなく,本件商標と引用商標A及びCとは類似しない旨主張する。
確かに,最高裁昭和43年判決からすれば,商標の外観,観念又は称呼の類似は,出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,総合的に考慮して商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,類似商標と解すべきではない。しかし,同判決も,商標の外観,観念又は称呼の類否を全く検討することなく,取引の実情のみによって,商標の類否を判断してよいとするものではない。
したがって,まず,本件商標と引用商標A及びCの外観,観念及び称呼を比較検討する必要があるものであって,必要がないとの原告の主張は採用できない。

「2 本件商標と引用商標A及びCとの類否について」

本件商標の「POLO」部分と「RALPHLAUREN」部分は,互いに無関係の単語を組み合わせたにすぎないものではなく,この組合せにより,有名な米国のデザイナーであるラルフローレンのデザインに係る商品であるとの強い自他識別力が生じるものと認められる。

以上からすれば,本件商標において,「POLO」部分のみが,取引者,需要者に対し,商品や役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとか,「RALPHLAUREN」部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないとはいい難い。

「このように,本件商標から生ずる観念(ラルフローレンのデザインに係るポロ・ラルフローレン商品であること)は,引用商標から生ずる観念とは別個の,固有のものであるということができる。」

「また,外観面においても,本件商標では,「POLO」部分以外に多くの文字(「JEANSCO.」RALPHLAUREN」)があり,そのうち,少なくとも「RALPHLAUREN」部分の存在を無視することはできず(上記イ参照),「POLO」部分のみの引用商標AやCとは異なる。」

「他方で,称呼については,本件商標も,取引の場面において「Polo」と略されて呼ばれるものと解され(前記(1)イ参照),引用商標AやCと同様の称呼になるが,前述のとおり,観念において大きく異なる上,外観も異なる本件商標が,単なる「POLO」との記載がされただけの引用商標AやCとの間で,混同を生じるおそれはほとんどないといえる。」


「(3) 以上のとおり,取引の実情をも考慮した上で,外観,観念,称呼等を対比した結果,本件商標は,引用商標AやCとは類似せず,これらの商標との間で混同を生ずるおそれはほとんどないものというべきである。」


「5 以上のとおり,本件商標においては,「POLO」部分と「RALPH
LAUREN」部分とが結び付くことによって,ラルフローレンがデザインしたポロ・ラルフローレン商品であるとの自他識別力が強く働いており,これが商品等に付された場合,原告のポロ・ラルフローレン商品であることを強く識別させるものであって,本件商標と引用商標A及びCとの間で混同を生ずるおそれは極めて低く,本件商標と引用商標A及びCは類似しない。したがって,本件商標につき商標法4条1項11号を適用することはできず,同条項を適用した審決は誤りであるから,同審決を取り消すこととする。」

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縮小版

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・商標の類否の判断手法について
・・商標の類否は,対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者,需要者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにし得る限り,その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である。
また,商標の外観,観念又は称呼の類似は,その商標を使用した商品につき出所の誤認混同のおそれを推測させる一応の基準にすぎず,したがって,上記3点のうち1点において類似するものでも,他の2点において著しく相違するなどして,取引の実情等によって,商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいものについては,これを類似商標とすべきではない(前出最高裁昭和43年2月27日判決参照)。
さらに,複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて,商標の構成部分の一部を抽出し,この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは,その部分が取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や,それ以外の部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないと認められる場合などを除き,許されない(前出最高裁昭和38年12月5日判決及び前出最高裁平成20年9月8日
判決参照,知財高裁平成22年4月27日判決(平成21年(行ケ)第10152号審決取消請求事件(商標))。

また,前出最高裁昭和43年判決は,「商標の外観,観念又は称呼の類否を全く検討することなく,取引の実情のみによって,商標の類否を判断してよいとするものではない。」

したがって,まず,本件商標と引用商標A及びCの外観,観念及び称呼を比較検討する必要がある(知財高裁平成22年4月27日判決(平成21年(行ケ)第10152号審決取消請求事件(商標))。

・観念
・外観
・称呼


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H22.7.21現在のコメント

商標の世界で無敵ともいえるラルフローレンが珍しく負けた事件です。

基準はオーソドックスなものです。


「本件商標において,「POLO」部分のみが,取引者,需要者に対し,商品や役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとか,「RALPHLAUREN」部分から出所識別標識としての称呼,観念が生じないとはいい難い。」
「「POLO」部分と「RALPHLAUREN」部分とが結び付くことによって,ラルフローレンがデザインしたポロ・ラルフローレン商品であるとの自他識別力が強く働いており,これが商品等に付された場合,原告のポロ・ラルフローレン商品であることを強く識別させるもの」

とはっきり認定した点が,重要です。

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