2010年8月6日金曜日

税法:相続税基本通達,財産評価205「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」

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税法:相続税基本通達,財産評価205「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」


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相続の開始時に,貸金が被相続人に存したときの評価を定めた通達です。




・基本通達・財産評価205
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka/08/08.htm#a-203
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(貸付金債権等の元本価額の範囲)
205 前項の定めにより貸付金債権等の評価を行う場合において、その債権金額の全部又は一部が、課税時期において次に掲げる金額に該当するときその他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるときにおいては、それらの金額は元本の価額に算入しない。(平12課評2-4外改正)

(1) 債務者について次に掲げる事実が発生している場合におけるその債務者に対して有する貸付金債権等の金額(その金額のうち、質権及び抵当権によって担保されている部分の金額を除く。)

イ 手形交換所(これに準ずる機関を含む。)において取引停止処分を受けたとき

ロ 会社更生手続の開始の決定があったとき

ハ 民事再生法(平成11年法律第225号)の規定による再生手続開始の決定があったとき

ニ 会社の整理開始命令があったとき

ホ 特別清算の開始命令があったとき

へ 破産の宣告があったとき

ト 業況不振のため又はその営む事業について重大な損失を受けたため、その事業を廃止し又は6か月以上休業しているとき

(2) 再生計画認可の決定、整理計画の決定、更生計画の決定又は法律の定める整理手続によらないいわゆる債権者集会の協議により、債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等の決定があった場合において、これらの決定のあった日現在におけるその債務者に対して有する債権のうち、その決定により切り捨てられる部分の債権の金額及び次に掲げる金額

イ 弁済までの据置期間が決定後5年を超える場合におけるその債権の金額

ロ 年賦償還等の決定により割賦弁済されることとなった債権の金額のうち、課税時期後5年を経過した日後に弁済されることとなる部分の金額

(3) 当事者間の契約により債権の切捨て、棚上げ、年賦償還等が行われた場合において、それが金融機関のあっせんに基づくものであるなど真正に成立したものと認めるものであるときにおけるその債権の金額のうち(2)に掲げる金額に準ずる金額

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・国税不服審判所裁決の解釈

この解釈について,
国税不服審判所平21.5.12裁決(裁決事例集No.77 444頁)
が,あります。

「この場合の「次に掲げる金額」とは、別紙の4のとおり、債務者について手形交換所の取引停止処分等に該当する事実があったときの貸付金債権等の金額並びに再生計画認可の決定、整理計画の決定及び更生計画の決定等により切り捨てられる債権の金額等が掲げられている。そうすると、「次に掲げる金額に該当するとき」とは、いずれも、債務者の資産状況及び営業状況等が破たんしていることが客観的に明白であって、債権の回収の見込みのないことが客観的に確実であるといい得るときであると解するのが相当である。
 そして、「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」とは、貸付金債権等の評価方法として、評価基本通達204及び205の定めが、上記のとおり、原則として元本の価額と利息の価額の合計額とし、例外として債務者について手形交換所の取引停止処分等に該当するような客観的に明白な事由が存する場合に限り、その部分の金額を元本の価額に算入しない取扱いをしていること及び同通達205の(1)から(3)までの事由と並列的に規定されていることからすると、上記の「次に掲げる金額に該当するとき」と同視できる程度に債務者の資産状況及び営業状況等が破たんしていることが客観的に明白であって、債権の回収の見込みのないことが客観的に確実であるといい得るときであると解するのが相当である。」

要件をまとめると,
・破綻等客観的明白性
・回収不見込みの客観的確実性

となるでしょうか。

通達を前提にすれば,そんなに変な解釈ではありません。


・国税不服審判所平21.5.12裁決(裁決事例集No.77 444頁)による事実認定

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(3) 本件貸付金の評価基本通達へのあてはめ

イ 本件貸付金については、上記(2)のロのとおり、評価基本通達の定めに基づいて評価するのが相当であるところ、本件会社について、別紙の4の(1)から(3)までに該当する事由は認められないことから、本件貸付金の全部又は一部が、本件相続開始日において、評価基本通達205に定める「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」に該当するか否かについて、本件会社の資産状況及び営業状況等に照らし判断すると、次のとおりである。
(イ) 請求人が主張するとおり、本件会社は、本件相続開始日前から数事業年度にわたり多額の繰越損失があって債務超過であり(別表2及び3)、その主たる事業であった○○製造業はK社に引き継がれていることが認められる(上記(1)のト)。
 しかし、本件会社は、本件相続開始日以降、現在に至るまで存続し、従業員のうち障害者をK社に出向させ、主にK社からの出向料及び国等からの助成金により、別表3のとおりの営業外収益を計上している(上記(1)のヌ)。
 また、本件会社は、事業目的を不動産の売買等に拡大した後、平成14年7月期に地方裁判所の競売入札に参加していること(上記(1)のロ及びル)、及び平成17年7月期において、不動産取引による売却益として39,120,000円を計上していること(上記(1)のチ及びリ)からすれば、本件会社の営業が停止していたとは認められない。
(ロ) 本件会社は同族会社であり、関係グループ会社の代表者も本件被相続人又はその親族らである(上記(1)のイ及びハ並びに1の(4)のロ)。そして、本件会社の借入金債務は、別表2のとおり、K社、本件被相続人及びその親族からの債務が大半であって、返済期限等の定めがないため(当審判所の調査の結果)、直ちに返済を求められる可能性は極めて低く、金融機関等外部からの借入れに比べて有利といえる。
 現に、本件会社は、関係グループ会社との間で頻繁に貸借を行い、特にK社との間では、常時貸借が存在し、時々に応じて返済していた事実が認められる(上記(1)のヲの(イ)及び(ニ))。
 さらに、本件相続開始日において、本件会社のU銀行及びV銀行に対する借入金債務残高は零円となっている上、L銀行に対しては、月々500,000円の返済を続けており、同銀行は、返済期限をはるかに過ぎている債権であるにもかかわらず、積極的な債権回収の動きをしていない(上記(1)のヲの(イ)及び(ロ))。本件被相続人からの借入金についても、本件相続開始日の直前に、合計約20,000,000円を返済している(上記(1)のヲの(ハ))。
(ハ) 以上のことから、本件貸付金については、本件相続開始日において、評価基本通達205に定める「その他その回収が不可能又は著しく困難であると見込まれるとき」、すなわち、本件会社の事業経営が破たんしていることが客観的に明白であって、債権の回収の見込みのないことが客観的に確実であるといい得る状況にあったとは認められない。
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H22.8.6現在のコメント

実は,税法上の問題は,
他の法律問題の争い如何ということによることも結構多いです。
前に紹介した

知財高裁平成22年5月25日判決(平成21年(行コ)第10001号法人税更正処分取消等請求控訴事件)

も,その実質は,「寄附金」という税法プロパーではなく,
著作権の譲渡・移転という法律上の事実認定が問題になっていました。

この知財高裁でも少し苦言をていしていますが,一旦,税務上の処分が出されれば,
法律的変な主張や事実認定上無理なことをいってでも,それを維持しようとするのが,行政です。

当初から弁護士がついていないと,
通達に従って,そのままの状態で処理されてしまいます。


前に書いた
 
はざまの問題と戦略,弁護士の専門性開示

の審査料減免規定の適用の問題でもそうでしたが,

何も対策が取られなければ,
今は,適用ありますorありません
の話しで終わってしまいます。


この裁決の事例でも,本当に破綻を立証しようとして,
本当に,破綻処理をしようとしていたのであれば(請求人は,そう主張している),

相続開始後でも,破産等の手続を取るべきだった
と思います。

大分状況は違ってきたかと思います。


状況としては,

・通達が不当として,上にあげる,つまり,税務訴訟に踏み込むか,
・通達に従うべく(妥当な)法律的な行動をとるしか

ありません。


一応,

特許関係等は,弁理士
税務関係等は,税理士

というのはあります。

普段の申告等の手続は,いいのですが,

法律的な解釈,法律的な事実認定が必要な事案,
訴訟まで見据えたり突発的な対応のために,法的手続が必要な事案

では,

やはり,

弁護士が必要と思います。


これも,職域による,

はざまの問題

です。


税法関係も,やはり,

法律問題とは切り離しては考えることはできません。
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