2011年3月16日水曜日

知財高裁のまとめ:職務著作性を主張するには,具体的なソースで戦う必要がある

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著作権:【職務著作性】「事実認定」,【「プログラム言語のちがい」による著作物性】「判断」:(知財高裁平成23年3月15日判決(平成20年(ネ)第10064号著作権確認等請求控訴事件))


知財高裁のまとめ
にUpしました。

珍しい態度ですが,この知財高裁判決は,少しおかしいと考えましたので,コメント欄に,多くを書いておきました。

再度,まとめて書いておきます。

(知財高裁平成23年3月15日判決(平成20年(ネ)第10064号著作権確認等請求控訴事件))


まず,プログラム言語が異なれば,実質的に同一とはいい難いというのは,そのとおりとおもいます。

NECシステムのプログラム言語は,
「Visual Basic 又は VisualBasic for Application」とはっきり出ています。
本件システムのプログラム言語は,IBM専用機ということになれば,少なくとも「Visual Basic 又は VisualBasic for Application」ではないとは判断できるでしょう。


あまり知財高裁には意見を言わないようにしていますが,この縮小版として挙げていない「法人の発意」についての判断は,おかしいとおもいます。

「法人の発意」は,著作物に対する発意ですが,「本件システム」=プログラムと,必ずしもならないはずです。

「以上のとおり,本件システムの開発が,控訴人が在籍中の出向元である被控訴人の指示により開始され,被控訴人の完全子会社である信友及び中国塗料技研がその意向を受けて法人として本件システムの開発を発意しているのであるから,両社において当該開発業務に従事する控訴人が,その職務上作成した本件システムのプログラムの著作者は,その作成時における契約や勤務規則等の別段の定めがない限り,法人である信友又は中国塗料技研となるものと認められ(著作権法15条2項 ,)上記別段の定めについての主張立証はないのであるから,結局,本件システムのプログラムの著作者は,信友又は中国塗料技研,あるいはその双方であると認めるべきである。」

という知財高裁判示だけをみれば,システム発注すれば,そのプログラムの中身を見る必要もないということになります。本件システムという結論を得るプログラムは,色々な道があるはずです。その結論を得るために,創作性があれば,そのプログラムについて,著作物性が論じられることになるはずです。

ただ,この事案

「本件システムのプログラムは,その構成内容が明らかでなく,サーバ側のプログラムと端末側のプログラムの切り分けやプログラム言語もほとんど不明であるが,IBM社のオフィスコンピュータ S/36 又は AS/400 専用に開発されたものであり,同社製のコンピュータ上で動作するデータベース管理プログラムである Query/36が用いられている。」

となっているところが,大きく結論を左右したともいえます。

対象の本件システムのソースが明らかになっていないばかりか,職務著作性を主張した側において,自分の創作したとされるプログラムソースを示すことができなかった事例といえましょうか(判示からしかみていないので,わかりませんが)。

職務著作による相当金請求を主張するのであれば,その創作性を発揮したソースが自分の手元になければ,なかなか戦うことは困難です。

情報管理がかなり厳しいと,難しいのかもしれませんが,やはり,自分のソース,著作物性を主張するもの,そのソースが,手元にないと戦いにくいことは確かです(後で,頭の中だけで再現するのは,ここまで大掛かりなものになると難しいとなれば,やはり,結果的に,会社のものという判断となるのは,知財高裁を擁護する立場で考えれば,そうともいえます)。

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H230317現在のコメント
判決は,その判決だけ,「当裁判所の判示」だけをみて判断ができるようにされるべきです。原判決の経緯からみて分かるというのは好ましくない。その意味では,この判決は,好ましくないとはいえます。

規範的には,著作権:【職務著作性「法人等の発意に基づくこと」】「基準」(最高裁判決引用):(知財高裁平成23年3月10日判決(平成22年(ネ)第10081号 損害賠償等請求控訴事件))と同じともいえ,言い方・書きぶりのちがいともいえますが,少し言い過ぎの感はします。

この(知財高裁平成23年3月10日判決(平成22年(ネ)第10081号 損害賠償等請求控訴事件))は,

 
業務に従事する者の職務の遂行上,当該著作物の作成が予定又は予期される限り,「法人等の発意に基づくこと」の要件を満たすものと解すべきである。

としていますが,これに対する判断は,当該判決にはありません。ただ,本件システムを発注すれば,当然そのような機能等を伴う著作物(プログラム)が作成されるはずだということであれば,この判決は説明可能とはいえます。

いずれにしても,このような判断をするのであれば,ソース同士の具体的な対比等のやり取りまで必要と考えます。
抽象的にしかいえなければ,会社の職務著作物と流れがちとなるはずです。

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