2012年1月17日火曜日

国家・国旗をめぐる最高裁判決


1 国歌・国旗をめぐる最高裁判決
1.1 最一小平成24年1月16日判決(平成23(行ツ)242,停職処分取消等請求事件)(①判例)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81892&hanreiKbn=02

1.2 最一小平成24年1月16日判決(平成23(行ツ)263,懲戒処分取消等請求事件)(②判例)
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81893&hanreiKbn=02

やっと最高裁判決が具体的に示しました。規範としては,集大成的なものといえましょうか。

重要なことは,式典での起立行為を含めて,憲法19条に違反しないということを明言していること,

処分については,

「本件職務命令は,前記第2の1のとおり憲法19条に違反するものではなく,学校教育の目標や卒業式等の儀式的行事の意義,在り方等を定めた関係法令等の諸規定の趣旨に沿って,地方公務員の地位の性質及びその職務の公共性を踏まえ,生徒等への配慮を含め,教育上の行事にふさわしい秩序の確保とともに式典の円滑な進行を図るものであって(前掲最高裁平成23年6月6日第一小法廷判決等参照),このような観点から,その遵守を確保する必要性があるものということができ,このことに加え,前記1(2)アにおいてみた事情によれば,本件職務命令の違反に対し,学校の規律や秩序の保持等の見地から重きに失しない範囲で懲戒処分をすることは,基本的に懲戒権者の裁量権の範囲内に属する事柄ということができると解される。」(①判例,②判例)

と職務命令により懲戒処分をすることが基本的に裁量であるとした判断を固めたのは,かなり大きい判断です。

それに加えて,戒告処分については,

「不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについて,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮を必要とする事情であるとはいえるものの,このことを勘案しても,本件職務命令の違反に対し懲戒処分の中で最も軽い戒告処分をすることが裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとは解し難い。また,本件職務命令の違反に対し1回目の違反であることに鑑みて訓告や指導等にとどめることなく戒告処分をすることに関しては,これを裁量権の範囲内における当不当の問題として論ずる余地はあり得るとしても,その一事をもって直ちに裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法の問題を生ずるとまではいい難い。」(②判例)

として,訓告や指導にとどめることもしなくいきなり戒告処分をしてもよいとしたことも,かなり大きい。

処分の妥当性自体は,完全に認めているものです。

2 処分の適否
2.1 処分歴のない者に対する戒告処分→可能
「(2) 以上によれば,本件職務命令の違反を理由として,第1審原告らのうち過去に同種の行為による懲戒処分等の処分歴のない者に対し戒告処分をした都教委の判断は,社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず,上記戒告処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえないと解するのが相当である。」(②判例)

1回だけの不起立についても,処分歴がなくても,職務命令違反として,戒告処分をなすことは可能と判断していることは大きい。

2.2 処分歴のない者に対する減給処分以上の処分
「上記のような考慮の下で不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えて減給の処分を選択することが許容されるのは,過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下,併せて「過去の処分歴等」という。)に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべきである。したがって,不起立行為等に対する懲戒において減給処分を選択することについて,上記の相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるためには,例えば過去の1回の卒業式等における不起立行為等による懲戒処分の処分歴がある場合に,これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである。」(②判例)

なにか有利に解釈しているようにしている見解もありますが,減給処分以上も場合によっては可能としたことは,かなり大きな判断です。

特に「過去の処分歴」を重視していますので,簡単にいえば,たとえば,国家・国旗に関する研修等を積み重ね,それに関する職務命令違反を問えばいいということになります。元々,戒告処分さえ違法・不当,職務命令としても認められないという見解に立たないと処分を免れることはできないということになります。

これからの問題は,職務命令者の心意気ということになりましょうか。

2.3 処分歴のある場合の停職処分
「例えば過去の1,2年度に数回の卒業式等における不起立行為による懲戒処分の処分歴がある場合に,これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴等が停職処分による不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである。」(判例①)

過去1,2年度の数回の不起立行為による処分歴があるだけでは,だめと言っているに過ぎません。

3 具体的な判断
3.1 過去に処分歴(複数)のある場合の停職処分→いまだ停職処分は不当
「過去の懲戒処分の対象は,いずれも不起立行為であって積極的に式典の進行を妨害する内容の非違行為は含まれておらず,いまだ過去2年度の3回の卒業式等に係るものにとどまり,本件の不起立行為の前後における態度において特に処分の加重を根拠付けるべき事情もうかがわれないこと等に鑑みると」(①判例)

積極行為がない

過去2年度に3回

では,停職処分はダメ

3.2 過去に処分歴(複数),積極行為がある場合の停職処分(3か月)→妥当

「過去に,不起立行為以外の非違行為による3回の懲戒処分及び不起立行為による2回の懲戒処分を受け,前者のうち2回は卒業式における国旗の掲揚の妨害と引き降ろし及び服務事故再発防止研修における国旗や国歌の問題に係るゼッケン着用をめぐる抗議による進行の妨害といった積極的に式典や研修の進行を妨害する行為に係るものである上,更に国旗や国歌に係る対応につき校長を批判する内容の文書の生徒への配布等により2回の文書訓告を受けており,このような過去の処分歴に係る一連の非違行為の内容や頻度等に鑑みると」(①判例)

3.3 過去に処分歴1回の場合に減給処分→減給処分は厳しい
「過去の懲戒処分の対象は,約2年前に入学式の際の服装及びその後の事実確認に関する校長の職務命令に違反した行為であって積極的に式典の進行を妨害する行為ではなく,当該1回のみに限られており,本件の不起立行為の前後における態度において特に処分の加重を根拠付けるべき事情もうかがわれないこと等に鑑みる」(②判例)

約2年前の入学式での服装等の過去処分歴

積極的に式典の進行を妨害する行為ではない

当該1回のみ

では,減給処分は厳しいと言っています。

4 具体的判断に対して

実は,最高裁の具体的判断は,かなり,小さな事実を拾っています。

逆にいえば,

過去処分歴が積み重なっている場合,

積極的に式典の進行を妨害する行為である場合

には,戒告処分は当たり前にでき,減給処分以上も場合により可能と読めます。

そして,この最高裁については,私個人的には不満はありますが,職務命令者がきちんと対応すれば,それなりの結果を出せるものと考えられます。