2012年5月28日月曜日

生活保護と扶養義務:民法の扶養義務?

結構いろんなところから質問があったので,ブログ化

少しづつ書きましょう。


生活保護法では,


(調査の嘱託及び報告の請求)
第二十九条  保護の実施機関及び福祉事務所長は、保護の決定又は実施のために必要があるときは、要保護者又はその扶養義務者の資産及び収入の状況につき、官公署に調査を嘱託し、又は銀行、信託会社、要保護者若しくはその扶養義務者の雇主その他の関係人に、報告を求めることができる。

として,保護の決定・実施に,「その扶養義務者の資産及び収入の状況につき」「必要があるときは」,「嘱託」「報告」を求めることが「できる」

という規定があります。

ここでの「扶養義務者」は,民法に規定があります。

ちょっと多めに引用します。

(扶養義務者)
第八百七十七条  直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2  家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3  前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

(扶養の順位)
第八百七十八条  扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。

(扶養の程度又は方法)
第八百七十九条  扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

(扶養に関する協議又は審判の変更又は取消し)
第八百八十条  扶養をすべき者若しくは扶養を受けるべき者の順序又は扶養の程度若しくは方法について協議又は審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる。

(扶養請求権の処分の禁止)
第八百八十一条  扶養を受ける権利は、処分することができない。


877条1項が原則論を規定しています。

直系血族というのは,簡単にいえば,血でまっすぐにつながる親子,孫,祖父母の関係です。
直系血族と兄弟姉妹は互いに扶養義務があります。

2項の「三親等内の親族」というのは,同じ親までたどって数えます。
たとえば,親子は1親等,兄弟は2親等です。

親族の範囲は,

(親族の範囲)
第七百二十五条  次に掲げる者は、親族とする。
一  六親等内の血族
二  配偶者
三  三親等内の姻族

と民法で規定されています。親族には,血族姻族は含みます。それなので,2項の三親等内の親族とは,たとえば,夫(子)の嫁も含むことになります。規定を純粋に考えると,原則的に,夫に扶養義務はあっても(子)(1項),夫の嫁には扶養義務は特別なことがないとないということになります(2項)。


とはいえ,抽象的に扶養義務があったとしても,現実に義務を果たすかは,事情によります。それを定めたのが,民法878条,879条です。

要するにもめたら家庭裁判所が定めるという規定です。


では,生活保護法との関係でいうと,
扶養義務があったとしても,実際に扶養義務が尽くされてない事情があれば,生活保護は受給されなければなりません。

生活保護は,今ある危機のためですので,協議しろとか,調停しろとか家裁の判断を待つのだ!という悠長のことをいっておれません。

申請から判断まで原則14日と定められているのも,そういう事情があるからです(生活保護法24条3項)。


金持ちが親族にいるから放置すればいいというわけにはいかないのが生活保護ということになります。


とはいえ,上記の規定では,「できる」というだけで調査をしなくてもいいということに法律上はなります。生活保護法は,どちらかというと性善説的な,悪いようには利用されない!(だろう)という規定ではあるのかもしれません。


うまいこと利用する者のみが得をする,
本当に必要な者が受給を受けられない
不正がなかなか発覚しにくい
という問題点があるのは確かです。

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H240528追記

法律の理解に混乱がみられるようです。

(保護の補足性)
第四条  保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
2  民法 (明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
3  前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

法律上は,扶養義務者による保護が優先されます。しかし,3項で規定しているように,急迫事由の吟味がされるのは当然です。





(費用の徴収)
第七十七条  被保護者に対して民法 の規定により扶養の義務を履行しなければならない者があるときは、その義務の範囲内において、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。
2  前項の場合において、扶養義務者の負担すべき額について、保護の実施機関と扶養義務者の間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、保護の実施機関の申立により家庭裁判所が、これを定める。
3  前項の処分は、家事審判法 の適用については、同法第九条第一項 乙類に掲げる事項とみなす。

第七十八条  不実の申請その他不正な手段により保護を受け、又は他人をして受けさせた者があるときは、保護費を支弁した都道府県又は市町村の長は、その費用の全部又は一部を、その者から徴収することができる。

法律の不備といえば不備でしょうか。義務履行者の義務範囲内への費用徴収,不正手段でさえ,
「できる」ということになっており,必須ではなくなっています。
実務上は,78条のはよくみますが,77条のはみたことがありません。
78条で,よくあるのが言ってしまった!ってやつです。



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