2012年10月29日月曜日

戦犯の釈放についての日本弁護士連合会(日弁連)の対応

戦犯の釈放についての日本弁護士連合会(日弁連)の対応

先の大戦で戦犯とされた者への対応について、日弁連が、どのような動きをしたかは、ネット上でも断片的には分かります。

どうやら、昭和27年に、日弁連意見書が出され、それを契機に膨大な署名が集まったと集約されるようです。

ここで疑問点が2つ


  1.  一つは、日弁連の意見書の中身が、どこをみても分からない。
  2.  もう一つは、たかが日弁連が意見書を出しただけで莫大な署名なんか集まるんかいな?


という疑問です。

そこで、日弁連が発刊する機関誌「自由と正義」から探すことにしました。

時系列で書きます。

理事会決議(昭和26年11月17日)(「自由と正義」2巻11号p66)

一. 講和恩赦の適用範囲拡大要望書決定の件(原文は旧字、以下同じ) 
 左の要望書を承認早急関係当局へ提出することとした。

今次平和条約の効力発生は新生日本国独立の門出であって、国民は挙げて其の喜びと共に自覚と責任を新たにすべきものであり、日華事変以来占領下の現在に至るまでの法令によって嫌疑又は処断された被疑者、被告人又は刑余の人々についてもまた其の喜びと責任とを均沾させるのが当然であると信ずる。
 従って赦免を行うにあたっては先例にとらわれず劃期的廣汎な範囲においてこれを施行すべきものと考えられるから当局は宜しく善処して右趣旨に応えられんことを要望する。

ちなみに、「均沾」(きんてん)とは、

「等しく利益にうるおうこと。」

である。

http://dic.yahoo.co.jp/dsearch/0/0ss/105212500000/


二. 戦犯者に対する恩赦について各弁護士会に其の地方に於ける戦犯者家族会と連絡し請願運動を為すことを委嘱する件並に之が具体的方法指示の件

宗教法人白蓮社及び東京家族会の代表者並に国際軍事裁判弁護団代表から陳情があり、十一月ニ日緊急理事会の議を経て、右陳情を容れ、各弁護士会に対し其の地方の戦犯者家族会と連絡の上適当な方法で請願等の運動を起こすよう依嘱することとなり、海軍関係は十一月五日付で各弁護士会に依嘱し、陸軍関係も更に依嘱するなお、右運動の具体的方法については連合会に於て請願趣意書を起草して四通宛各弁護士会に送付し戦犯者家族会と弁護士会と連署の上連合会に回付して貰い連合会で一括して衆参両院法務委員会及び法務府に提出することとした。





陳情があり緊急理事会が昭和26年11月2日、具体的方法を指示しているのが、同月5日。
めちゃくちゃ動きが早いです。

戦犯者に対する恩赦請願書及び要望書並に之が実行について事後承認の件(理事会決議、平成26年12月15日)(「自由と正義」3巻1号p69)

前回理事会決議に基き小委員会で起草した左記請願書、要望書を常務理事会に諮って決定し、請願書については各弁護士会に送付し家族会員及び弁護士会員の署名をとって連合会に提出するよう手配し、要望書については連合会から政府(総理、法務総裁宛)及び衆参両院法務委員長に提出した。連合国に対しても提出することとした。

  戦犯者の特赦に関する要望書

一. 凡そ正義を崇び愛を万物に及ぼす人類の聖なる責務でなければならない。
二. 戦犯として処刑されている者には誤れる軍国主義を盲信して正義に
悖り人道を蹂躙した者もあったであろうが、その中には無智軽忽洵に憫諒とすべきものが尠くない。
三. 今や和解と信頼とを基盤とした講和が成立し將にその発效を見んとするに際し、政府は之を機として須らく戦犯者の助命、内地帰還及び釈放につき敏速且つ適切なる措置を竭すべきである。

右要望する。

昭和二十六年十二月一日

日本弁護士連合会


請願書

戦時下緊迫した情勢に刺激せられた結果とは言へ誤って正義人道に背反した者が戦犯者として刑余の人となったことは素より止むを得ないことではあるが、近く講和条約の発效を見んとし之を機会に広く恩赦が行われんとするに際し、之等戦犯者に対しても特別の寛容を以て赦免を行い以て世界平和に対する自覚と反省とを与へることは高き人類愛の顯現であると信ずる。

右事情御斟酌の上戦犯者に対し赦免の措置を講ぜられるよう特段の御盡力を懇請する。


誤ってと書いていますね。弁護士会の具体的な動きが決められました。署名活動をすることになります。

具体的な請願書は、「自由と正義」3巻5号p54に書いてあります。

戦犯者赦免請願書提出
近く講和条約の発效を見、之を機会に広く恩赦が行われんとするにあたり、さきに戦時下の緊迫した情勢に刺戟せられ誤って反正義、反人道的行動に出て、ために戦犯者として刑余の人となったわが同胞に対しても、特別の寛容を施して赦免の恩典を洽くし、以てこれらの者に世界平和に対する自覚と、反省との機会を与えることは、ひとりその更生を得しめる所以たるのみならず、高き人類愛の見地から、当さに然るべきである。
よって茲に之等戦犯者に対する赦免の措置を逸することのないよう特段の御盡力を懇請する次第である。
   昭和二十七年二月二十三日
 連合軍総司令官
M・リッジウェイ大将宛

これがGHQ宛分です。

 戦時下緊迫したる情勢に刺戟せられた結果とは言へ、誤って正義人道に背反した者が戦犯者として刑余の人となったことは、素より止むを得ないことではあるが、近く講和條約の発効を見んとするに際し、之等戦犯者に対しても特別の寛容を以て赦免を行い以て世界平和に対する自覚と反省とを与えることは、高き人類愛の顕現であると信ずる。右事情御斟酌の上、戦犯者に対し赦免の措置を講ぜられるよう特段の御盡力を懇請する。
昭和二十七年三月十三日

法務総裁     木村 篤太郎氏
衆議院法務委員長 佐瀬 昌三氏   宛
参議院 〃    小野 義夫氏


ちょっと本題から外れますが、宛に肩書きをつけ、氏をつけていますね。当時の正式な書き方(弁護士特有のかもしれません)なんでしょうか。

もどります。この請願の結果、署名者数が同じ「自由と正義」3巻5号p53に掲載されています。

昭和二十七年三月十三日午前十一次、奥山会長、江川事務総長は白蓮社常行関口慈光師と同行、木村法務総裁、佐瀬、小野衆参両院法務委員長を歴訪し、同日迄に到着した全国戦犯者家族及び弁護士会員約三万三千名署名の戦犯者赦免請願書を提出、速かに赦免の措置を講ぜられるよう特段の盡力を懇請した。

この後、都道府県別(取り扱い弁護士会名ごと)に、家族署名者数と弁護士署名者数の集計が並びます。
合計は、3万2834名です。
弁護士署名者数は、合計してみると(一括して合計しているので自分でしてみる)、3,192名の弁護士が署名をしています。

ちなみに、昭和20年代の弁護士の数はすぐにわからなかったが、昭和38年当時は、
全国で、6932名だったそうだ。



どちらにしても、脅威の人数ですね。
署名集めは、単に意見書を集めただけではなく、かなり積極的に弁護士会、単位弁護士会が動いた成果といえるでしょうか。
やれるもんですねえ。


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