2014年12月2日火曜日

忘れられる権利の発動する期間:不起訴処分、実刑(やや専門向け)




H261202記載
1 忘れられる権利

ネット上にいったん情報が載ると、
半永久的に残ります。大きな利点ではあります。

しかし、私生活上の情報が半永久的に残るとされると様々な支障が生じることも確かです。

そこで、最近「忘れられる権利」が話題となっています。注目されたきっかけは、欧州連合が提案した「一般データ保護規則案」のArticle 17に明記されたことでした。
Proposal for a REGULATION OF THE EUROPEAN PARLIAMENT AND OF THE COUNCIL

きちんと該当原文を挙げておきましょう。

Article 17 provides the data subject's right to be forgotten and to erasure. It further elaborates and specifies the right of erasure provided for in Article 12(b) of Directive 95/46/EC and provides the conditions of the right to be forgotten, including the obligation of the controller which has made the personal data public to inform third parties on the data subject's request to erase any links to, or copy or replication of that personal data. It also integrates the right to have the processing restricted in certain cases, avoiding the ambiguous terminology “blocking”.


2 真実性と情報の重要性

たとえば、報道機関で、誰々が逮捕されたなどとの報道は、それ自体が真実の場合があります。

法律的には、逮捕は逮捕事実が真実でなくてもよいので、逮捕されたことというのは、真実報道となります。

逮捕報道は、社会的にも有益なことも多々あります。

逮捕されたことを報道することは、名誉毀損やプライバシー侵害となりますが、知る権利(表現の自由)が優先する事態といえます。

3 逮捕後に反映されない事実

しかし、逮捕された後に、捜査の結果、不起訴処分、特に、嫌疑不十分(罪とならずも)となった場合には、逮捕されたという事実がネット上に残ることは、極めて不利益となります。

結果は報道されないこともありますし、逮捕の事実のみが単独で流布する場合もあります。

一応、真実性はある(名誉毀損にはなりにくい)事実が流布するので、通常の枠組みでは捉えきれないともいえる事態です。

4 ある一定期間後の「忘れられる権利」の発動(私見)


不起訴処分と結果的になったとして、どれだけの一定期間が経てば、「忘れられる権利」が発動するか、まだ答えは出ていません。

私見ですが、執行猶予の規定は、参考になるとおもわれます。

執行猶予は、ある一定の要件がある場合に、1年から5年内で、刑の執行を猶予するものです。

執行猶予が付された期間、なにもなければ、「刑の言渡しが効力を失う」ことになります。これは、刑の言渡しの効力が将来的に消滅することを意味します。法律上の復権といいます。

(狭義の)前科とならないことになります。

たとえば、履歴書の「前科」欄に記載する必要がないということになります。

執行猶予と不起訴処分は、どちらが法律的に罪が重いかは、不起訴処分のうち、嫌疑不十分などの罪が認められない内容ならば、もちろん、起訴猶予(これは罪は認めるが猶予の処分)よりも、執行猶予は重いといえましょう。

執行猶予ならば、最大限5年経過すれば、法律的には、復権が認められます。

それならば、不起訴処分の場合はなおさらといえましょう。

情報がネット上に流布する期間が、執行猶予最大期間5年を経過すれば、「忘れられる権利」の発動を認めてもいいのではないかと思っているところです。

5 実刑と公訴時効(私見)

また、実刑となったとして、「忘れられる権利」が発動する期間も考えましょう。

実刑には、略式起訴(罰金刑)と正式裁判による実刑(執行猶予が付かないものを、ここではいう)があります。執行猶予付き判決も、実刑にはなりますが、執行猶予は上記の考えでいくので、とりあえず省いておきます。

略式起訴の場合は、罰金を払うという形で終了するものですが、執行猶予が、通常、正式裁判を経てされるものですので、略式起訴の場合は、執行猶予より重くないということで、処分から5年ということで「忘れられる権利」の発動を認めてもよいと思われます(私見)。


では、実刑、一般的には刑務所に行ったというものですが、この場合は、どう考えるか。

ここでは、公訴時効が参考になろうとおもいます(刑事訴訟法250条)。

ドラマなどでも取り上げられる時効です。

現行法では、

①人を死亡させた罪であつて死刑に当たる罪

②人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く)

③「人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの」以外の罪


①は、時効の規定がありません。つまり、時効にかからない罪です。殺人罪、強盗殺人罪が入ります。
これで実刑になったものは、「忘れられる権利」も発動しない、是非はありますが、とりあえずは、こう考えるのもおかしくはないかとおもいます。

②は、30年〜10年の時効期間と決まっています。
30年には、たとえば、強姦致死罪、強制わいせつ致死罪、
20年には、傷害致死罪、危険運転致死罪
10年には、業務上過失致死罪
が入ります。

③は、25年〜1年です。
25年には、死刑規定がある外患誘致罪や現住建造物放火が入ります。

②、③はかなり難しいですね。個人的には、強姦罪(致死や致傷がなくても)や外患誘致罪などは、一生ネットに残ってもいいと思いますが、公訴時効を基準にするとそうはなりません。

ただ、一応の目安として考えるということはいえましょうか。

6 まとめ

・不起訴処分(嫌疑不十分、嫌疑なし)
→時間を経過することなく逮捕情報の削除が可能(ただし、仮処分まで手続が必要かもしれない)(実績あり)

・不起訴処分(起訴猶予)・執行猶予
→執行猶予最大期間5年間を経過すれば、「忘れられる権利」が発動する(私見)。

・実刑

略式起訴(略式処分)→不起訴処分(起訴猶予)・執行猶予と同じく、5年間を経過すれば、「忘れられる権利」が発動する(私見)。

実刑、人を死亡させ死刑相当事件
「忘れられる権利」が発動しない(私見)。

あとは、公訴時効の期間(ただし、5年より短いのは考慮しなくてもよいか)が参考になる。ただし、必ずしも公訴時効と一致させる必要ないとおもう(私見)。


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