2015年6月12日金曜日

訴状の起案、試験向けと実務向け


H270612記載
試験向けと実務向けの訴状の記載の違いを書くことで、実務では、どう考える、考えているのかを書きたいとおもいます。どちらかというと「一般向け」ではなく「受験生向け」、「司法修習生など向け」といえます。


   

1  はじめに

受験生向けに、特に、主に知財訴訟に関する訴状の起案について書きます。

ポイントは、

 ・ 試験向け

 ・ 実務向け

と分けて考えることにあります。

試験は、採点をする以上、ある客観的基準にもとづいて点をつける必要があります。その題材が訴状のような実務向けの書面作成であっても同じことです。また、試験では、ここををみたい・みようという観点で、実務とは違った聞き方がされることがあります。ある意図した聞き方がある以上、その目的に沿った書き方をする必要がある場合もあります。
逆に、実務の場合は、教育的観点からみたものが当然なものとして書かれない場合もあります。また、試験的、また、厳密な学問上の議論からは少し離れているかもしれないが一般に通っている実務的慣行というものもあります。

この2点は、一致する場合もあり、時に違う場合もあります。試験で点をとるということからすれば気をつけなければいけない点、試験ではあまり注意は払われないが実務では極めて重要ということもあります。

2  形式面

2.1  管轄

2.1.1  試験向け

特許訴訟であれば、専属管轄の問題があります。実務ではものすごく悩むところですが、試験でも、東京地裁か大阪地裁で悩みをみせる必要があります。特許絡み、またはプログラム著作権絡みのように専属管轄であれば、試験的には楽といえます。


 

2.1.2  実務向け

特許が絡むと専属管轄となります。実務的には「管轄」、「訴額」、「送達」は、試験向けにはあまり注意は払われないが極めて重要視される項目となります。

「管轄」:地の利。こちらに近い管轄で裁判をするほうが絶対に有利です。

「訴額」:訴状の場合には、最初に印紙を貼る必要があります。通常知財部の場合は、「訴額計算書」をつけます。印紙の額は、少なくとも、まずは依頼者の負担となりますので、実務的に重要です。

「送達」:訴状の起案には関係がありませんが、これがされないと、そもそも訴訟が始まりません。

2.2  訴額

2.2.1  試験向け

試験で大きく問われることはあまりありません。

ただ、知財訴訟の起案の場合には、差止が入っている場合が多く、単に、損害賠償の額をそのまま書いてしまうなどすると大きな間違いとなってしまいます。

試験向けには、形式面というのは、とても重要です。簡単に点がつけられるからです。試験では、「起案の要領」が全てです。過去問でもっとも熟読しないといけない書面です。何が問われているか、何を書かなくてもよいかが明らかにされています。訴額は、試験向けには、あまり重要視されていません。

2.2.2  実務向け

訴額は、前にも書きましたが、実務的には極めて重要です。差止は知財分野では、存続期間等も議論され、かなり高額化することも多いといえます。

なるだけ、算定不能(訴額160万円)となるようにもっていけるか。ということも重要でしょうか。

2.3  当事者欄

2.3.1  試験向け

試験向けには、とても重要です。実務的には、被告に送達される前に、書記官チェックがあり、被告に送達される前には直されることも多いので、あまり表面化しませんが、恥ずかしい誤りが、試験では多くみられます。

2.3.2  実務向け

これもトレーニングの賜物でしょうか。あまり、悩むところはないのが通常のところです。

特殊事案(?)だと、結構悩むところがありますね。たとえば、支配人がするときの表示とか。実務的には、「別紙当事者目録の記載のとおり」として、別紙とすることが多いですが(書く方も、もらうほうも)、試験向けのマニュアルには、伝統的な記載(本文に書いてしまう)書き方が多いです。

当事者欄に誤り等があったときは、当事者目録方式の方が楽です。差し替えをすれば足ります。本文に記載したときは、行にずれ等がでれば、全部を差し替えをする必要が出てきます。また、当事者の数が多かったり、追加・取下げがあったり、事務所の所属弁護士が多かったりすれば、誤りがなくても差し替えができる方式が便利です。仮差押えや差押のような保全・執行事案では、当事者目録を別に用意する必要があります。利便性を重視というのが実務向けということでしょうか。


 

2.4  請求の趣旨

2.4.1  試験向け

試験向けとしても、意外と誤りが潜むところです。請求の趣旨の書き方は、試験向けには、請求の段階と主張の段階とを明確に区別しているかという、民事訴訟の基本が問われているところといえます。

主張的な書きぶりが入っていると、この人は、民事訴訟はわかっていないといわれかねない。

知財訴訟の特色としては、差止が入るので、「別紙物件目録」が必須の状況といえます。試験向けでも、自分で、「別紙物件目録」と記載しながら、別紙がない!というのは、減点とし易いのです。

2.4.2  実務向け

実務向けとしても、請求の趣旨は実は悩むことも多いところです。差止めにしろ、何をいれるのか、執行ができるか、登記はできるのか(登記訴訟の場合)、など慎重にすることも多いです。

試験向けでは、あまり注意は払われませんが、実務的には、「別紙物件目録」が実に極めて重要で、慎重に注意を払うところです。単に「製造番号」を入れるのか、この「製造番号」だけでいいのか、議論がかなりあるところです。


2.5  請求の原因

2.5.1  試験向け

試験向けでも、実務向けでも、ウマイ訴状・うまくない訴状という1つの重要項目があります。

訴状の目的の1つに、被告になるだけ認めさせるように記載すること
があります。民事訴訟の基本、弁論主義の問題ですが、弁論主義は、争いがないところには裁判所は立ち入りません。そうなれば、原告としては、被告になるだけ認めさせる部分が多くなればなるほど良いということになります。

実際にも争点が絞られていくことになりますので、被告が認めにくいような書き方をするのは、あまりよくありません。

形式面でいえば、

たとえば、ズラーっと文章が並んで認否がしにくい訴状というのは、試験としても実務としてもあまり良い訴状ではありません。弁護士の書面は、たとえば、項目見出しで、「2 ・・・・」のように、番号に見出し名をつけずに、文章を書くことが多いと言われることがあります。特に出版の世界(業界)に言われることですが、普通は見出し名をつけるべき、見出し名をつけないのであれば分けるな!という考えです。これは、弁護士側からすれば、理由をつけようとすればあり、下手に見出し名をつけると(大抵がこの部分の評価となりますから)、2の中身については認めるが、その評価として「見出し名」ではないので争うという厳密な認否がされることがあります。

いずれにしても、認否がしにくそうな訴状というのは、あまり良くありません。

同じような問題で、ついでにいえば、請求の原因は、基本事実を書くことが重要です。評価を交えると、そんなことは、ここに書いていない!と言われます。

たとえば、特許公報の記載をそのまま書けば、少なくとも、記載があることは認めるという認否を引き出せます。しかし、そのままを書いていなければ、評価については争う、もっといえば、そんなことは特許公報に書いていない否認する、などと無用な争いが生じます。

試験向けとしても、点をつけるとすれば、きちんと客観的記載を書いているというのは印象がよいといえましょう。

2.5.2  実務向け

実務的には、形式面は、結構色々とあります。

ここでも、ウマイ訴状・下手な訴状というものがあることはあります。

私は、割りと面倒臭くても、訴状p2の2行目から5行目までは認めるが、同6行目の「〜◎◎」の部分は、評価であり争う・・などと細かく書きますが、これをしない人も多いといえます。

たとえば、すべて否認する(w)。

これは、どちらかというと、答弁をするものが悪いのではなく、原告の訴状の書き方がまずい事案といえます。

2.6  証拠の表示

2.6.1  試験向け

試験向けには、割りと「証拠説明書のとおり」と書かかれていることも多いです。あまり実務では目にしませんが、便利かなと思ってきています。もちろん、試験向けでも、「証拠説明書のとおり」と書いてありながら、証拠説明書がない!というのは評価が低い(点がつけやすい)ということになります。

2.6.2  実務向け

実務では、割りと最初に訴状と一緒に出す証拠をきちんと書いておく場合が多いでしょうか。最近は、一般訴訟でも一般化してきましたが、知財訴訟では証拠説明書は、必須です。「証拠説明書のとおり」という書き方もいいのではないかと思ってきました。

ただ、厳密にいうと、証拠が出れば、同じくそれに対応した証拠説明書が別途出てくることになります。せめて、特定のために、「証拠説明書(H27.6.10付)のとおり」とか、「証拠説明書(甲1〜甲10)のとおり」とか、にしたほうがいいかなと個人的にはおもいます。

2.7  添付書類

2.7.1  試験向け

試験向けでも、点がつきやすいので、結構みられます。誤りが意外と多いところも試験としてはよいのです。

会社同士なのに(原告1名・被告1名)、資格証明が1通しかないとか。

試験向けには、これは間違いといえます。ただ、実務向けでいうと、間違いではないかもしれません(w)。訴状の添付書類には、1通だが、まだ取れていないので、1通だ!、試験でいうのは、やはり、屁理屈というべきでしょう。

2.7.2  実務向け

「資格証明書」というのは、実は、便利な言葉です。たとえば、会社の全部事項証明書(今は、これが多い)、昔ながらの登記簿謄本、はたまた、個人に使う住民票も、すべて、「資格証明書」で足ります。

仮に、住民票 1通と書けば、別のもちゃんと書かないといけないのかな、とはおもいます。ただ、実務的には、これが記載していないからといって、あまり文句はいわれません(もちろん、裁判所に、評価はされるかもしれませんが、わかっていない弁護士だな!とか・・・)。

3  内容面

3.1  訴状の目的の1つ

試験向けとしても重要ですが、あまり配慮されていない。結果的に、民事訴訟がわかっていないと評価されがちなことに、

事実を多く語ること

があります。実務として訴状を書く際には極めて気をつけなければなりませんが、事実を語らなければ、認否ができません。被告が認めるところをなるだけ多くするという訴状の目的の1つです。

試験向けでいえば、与えられた問題、資料(たとえば、特許公報の記載)は、すべて、客観的事実として取り扱います。司法試験の論文試験でもそうですが、与えられた問題、問題が記載している事実関係は、すべて使うぐらいの勢いで書くのが試験向けといえます。

実務と決定的に違うことは、何が事実かがはっきりしないこともあるか否かです。

試験は、採点をしなければならないという観点から、客観的な事実は決まっています。もれなく与えられた客観的事実は書く。これが試験向けとしては必須なことです。

3.2  食いつこうとする努力(どちらかというと試験向け)

試験では、重要なところです。たとえば、試験の問題で、均等論が主に問題となっている場合でも、技術的範囲の話が適当になっている答案はあまりよくありません。客観的な記載、特許の問題であれば、特許公報です。それを駆使して、食いつこうとする努力が見られる答案が望まれます。

実務でも、実は重要です。書面は人が現れます。

3.3  限られた材料の中で応える努力(試験向け)

試験向けと実務向けで決定的に違う点はここです。試験向けでは、限られた材料、与えられた材料が全てです。そこから勝手に作ってはいけません。問題文には、必ず意図があります。限られた材料の中で、どのように書くかが問われます。

実務では、与えられた材料だけで足りない場合があるといえます。もちろん証拠に基づく主張をしなければならないのですが、依頼者に与えられた材料だけで書くというのは、プロの仕事ではないでしょう。特に、特許等では、依頼者も相手方本人も、その技術については専門家というところがあります。これが裁判官にわかってもらえるのか?という疑問は、少し離れて考える必要があります。依頼者ら本人では自明すぎる基本的なことを、一から丁寧に書く。実は、結構重要なことです。


プログラム言語とは・・・・

などですね。

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